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「卒業式用」のメリケン粉、諭されフードバンクに寄付


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学校や両親の説得で「卒業記念」用の小麦粉を地域に贈る決心をし、贈呈式で笑顔を見せる金城優さん(前列右から2人目)=9日、浦添市の港川中学校 (同中提供)

中学校の卒業式で卒業生らが大騒ぎするためにばらまかれる予定だった小麦粉(メリケン粉)が、食料を必要とする人たちに役立てられた。浦添市の港川中を卒業した金城優さん(15)は計画に気付いた教諭や両親に説得され、後輩に用意させた57袋をフードバンクなどに寄贈。「ありがとう」があふれる温かな卒業記念に変わった。金城さんは「やりたかった」と唇をかむが「いいことをしたね」とたたえられると下を向いて、はにかんだ笑みを浮かべた。

周辺の中学校では一部の卒業生が後輩から小麦粉を集めて卒業を祝う「伝統」が残る。校内アンケートで小麦粉を集めさせられている1、2年生が見つかり、金城さんの関わりが判明した。

「いわゆる素行不良の生徒たちも認められたい気持ちは同じ。褒めることでいい方向に向けられたら」。當間正和校長が小麦粉の寄贈を提案した。金城さんと生徒指導の長嶺重信教諭らとの面談には金城さんの父・亙さん(45)、母・亜希子さん(37)も同席。最初は「自分も先輩にしてきたのに」と口をとがらせていた金城さんも両親に「食べるものに困っている人がいる」「いいことをしよう」と諭され、翌日には「分かった」。会話を絶やさず毎日夕食を共にする両親に育まれてきた金城さん。提案も受け入れることができた。

小麦粉代約1万1千円は両親の協力で下級生に返し、9日、校長室で贈呈式が行われた。市社会福祉協議会の地域保健福祉センターが仲介し、地域の交流カフェやフードバンクに贈られた。

長嶺教諭は「よく我慢した。卒業式でもいい表情だった」と金城さんの決断をたたえた。(黒田華)