『琉球王朝の料理と食文化』 資料に基づき的確に再現


社会
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『琉球王朝の料理と食文化』安次富順子著 琉球新報社・1500円+税

 「琉球王朝の料理と食文化」を手にしてページをめくり始めると感動が体中に沸き上がってきた。それは琉球王朝時代の料理人たちが永い年月をかけて切磋琢磨(せっさたくま)し料理の技術をみがき、客人をもてなしてきた気概と誇りがこの本を通して伝わってくるからだ。

 琉球王朝の重要な行事である冊封使の饗応に供する料理(御冠船料理ともいわれる)にはじまり「王朝菓子」の数々、そして「東道盆」、日本の本膳料理の様式を持つ「五段のお取持ち料理」それらのすべてを安次富先生自らお作りになり美しい写真で紹介している。
 先生がライフワークとして取り組まれている琉球王朝菓子については師事した「琉球王朝の庖丁人新垣淑規の末裔(まつえい)・新垣淑扶さんとの50年前の出会いが私を琉球菓子の研究へと導いてくれました」と記しておられる。
 冊封料理の点心にも登場する黄米〓、ケサチイナ、浅地アメ、水山吹や光餅、鶏卵〓、闘鶏餃などの菓子が紹介されているがそのほかにも日本系や南蛮系の菓子があって文献によると160もの種類があるとのこと。賞味してみたいものだ。
 先生との出会いは私が琉球大学の学生時代に先生の栄養指導の講義を受けたのが始まり。おだやかにお話しする先生の笑顔が今も印象に残っている。
 その優しい笑顔は今もそのままに調理師専門学校の校長として沖縄の調理師養成にご尽力なさっている。その先生があとがきに「琉球料理の衰退が危惧されている…」とお書きになっている。先人たちが残してくれた琉球王朝料理を資料に基づいて的確に再現して下さったこの本で料理に携わる私たち後輩にこれから何をなすべきかを考える指針を示して下さったのだと思う。
 歴史の中で中国、日本、アジア諸国の影響を受けながらも独自の料理に発展させてきた琉球の食文化に誇りを持ちながらもこれからは中国、日本に限らず世界の多くの国々との交流で得られる食材や技術も加え創意工夫をして次の世代に受け継がなければと思わせられた1冊だった。
(西大八重子・西大学院学院長)
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 あしとみ・じゅんこ 那覇高校、女子栄養大学家政学部卒。沖縄調理師専門学校校長。沖縄伝統ブクブクー茶保存会会長。

※注:〓は米ヘンに「羔」