『アジア輝く息吹 ウチナー新時代』 新たに根付く県系気質


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『アジア輝く息吹 ウチナー新時代』遠山光一郎著 琉球新報社・2138円

 シンガポールを拠点に活躍する沖縄市出身の遠山光一郎氏が3年をかけて琉球新報に連載した、アジア各国で頑張るウチナーンチュへのインタビュー集。アジアを拠点に活躍する若手ウチナーンチュの代表格だった著者も、沖縄を出て20年以上が過ぎ、そのネットワークも成熟味を増してきた。その成果物ともいえる。才色兼備のシンガポール人の奥様、アメリアさんとの間に2人の男の子に恵まれ、今や県内のみならず日本企業や行政機関からも引っ張りだこの遠山氏からのメッセージは「沖縄の若者たちよ、井の中の蛙(かわず)にならず『アジア』という大海に出て、自らの可能性を試してほしい」というものだ。

 アジア各都市に根づいて頑張っているウチナーンチュの92編のインタビューを通して、その国の国民性や価値観を身近に理解することができる。沖縄の県民性は日本の他の地域とは異なり、移住先に根づき地域の人々に溶け込んでいるということだ。その地に骨を埋める覚悟とユイマール精神が、地元の人たちから信頼を得て、たとえ資本力は無くても、情報量や人の絆でしなやかに生きている姿は誇りであり、素晴らしい。
 20世紀初頭のハワイ、南米、北米等に渡った政策移民とは歴史的に異なるものの、大交易時代に培われた琉球人気質はアジアへ飛び込んでいく現代の世代にも綿々と受け継がれている。世界のウチナーンチュ大会やその他、学術や経済の国際交流がきっかけで沖縄との絆が確実に広がっていることも読み取れる。
 10月に第6回の世界のウチナーンチュ大会を控え発刊はタイムリーであり、登場している人たちと会えるのが楽しみになってくる。いくら行動派の遠山氏でも自らの仕事もこなしながらアジアに散らばるウチナーンチュたちと会い連載記事をつづってきたことに心から敬意を表したい。海外に住むウチナーンチュはみな沖縄が大好きだ。ふるさと沖縄に貢献したいという気持ちで満ちあふれている。このネットワークがますます発展していくことを望んでやまない。
 (東良和・WUBネットワーク会長)
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 とおやま・こういちろう 1968年沖縄市出身。シンガポール国立大学院卒。三井物産や、みずほ銀行のシンガポール支店勤務を経て、独立。WUB(ワールドワイド・ウチナーンチュ・ビジネス・アソシエーション)シンガポール会長を務める。