無料塾の高校生進学率81% 那覇・沖縄市で50人募集


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 県が生活困窮世帯の高校生を対象に、那覇市と沖縄市で実施している「無料塾」で、2015年度の受講生43人のうち35人が進学を果たした。進学率は81・3%だった。事業を受託している尚学院によると、泊高の通信制に通い、昼間はアルバイトしながら大学合格を果たした生徒もいた。生徒は「母子家庭で塾に通う余裕がなかった。1年でたくさんの知識を身に付けることができた」と感謝した。今年の無料塾の申し込みは13日までとなっている。

 尚学院は15年度の受講生の感想文をまとめた。工業高校から琉球大学に合格した生徒は「高校3年で母が無職になり、祖父が入院し進学すらできないような状況にまで追い込まれた。無料塾がなければ自分の夢を諦めるしかなかった」とつづった。また、多くの生徒が「今後も高校生のために支援を継続してほしい」と事業継続を願った。
 尚学院の事業責任者の識名昇さんによると、那覇の教室には糸満市から通う生徒もいた。県外合格を果たしながらも金銭的理由から就職した生徒もいたという。識名さんは「歩いて通う子や、バス代が払えず自宅でネット授業を受けて勉強する子もいるなど、厳しい状況がある。一人でも多くの生徒が進学できるようにした」と話した。授業を受け持った講師の川辺寿幸さんは「まじめで意欲がある生徒ばかりで、教える方もやりがいを感じた」と話した。
 無料塾は、県が「子育て総合支援モデル事業」と位置付け、授業料を全額補助している。県は9日、本年度の募集要項を発表した。募集人員を昨年度の40人から50人に増やした。募集期間は13日まで。クラスは21日に開講する。ひとり親家庭など児童扶養手当受給世帯のほか住民税非課税世帯、里親家庭や児童養護施設で暮らす高校3年生が対象。
 尚学院は生徒への学習指導に加え、保護者に進学や奨学金制度の情報を提供。AO入試などに対応するための個別指導にも力を入れるという。申し込みや問い合わせは那覇尚学院(電話)098(867)3515、沖縄尚学院(電話)098(930)6000。