USJ、沖縄進出撤回 県と政府に正式伝達 「大阪に集中」


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
沖縄進出計画の撤回を伝えたユー・エス・ジェイのボニエCEO(左)ら=11日夕、那覇市内のホテル

 米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」の運営会社、ユー・エス・ジェイ(大阪市)は11日、沖縄への進出計画を撤回することを県と政府に正式に伝えた。昨年11月に親会社が変更したことで事業の見直しが進んだ結果、「既存の大阪のパークに経営資源を集中投資する」として第2のテーマパーク建設は見送る判断をした。

 ユー・エス・ジェイのジャン・ルイ・ボニエ最高経営責任者(CEO)は、11日午前に首相官邸で和泉洋人首相補佐官と面談。同日午後には来県し、安慶田光男副知事と面談して計画撤回の結論を伝えた。訪米中の翁長雄志知事は11日午前(日本時間11日夜)、記者団に対し「県内経済界などから賛否両論あり、県民の声などを分析していた中での断念だ。沖縄のソフトパワーと連動するものであればありがたいと思っていたが、その点に関して不確かだった」と述べた。
 昨年7月には当時のグレン・ガンペルCEOが翁長雄志知事と県庁で会談し、本島北部へのテーマパーク建設に向けた支援を要請。2020年にも開業する想定を示していた。同社広報室は取材に「新たな経営体制の下で、沖縄の案件も含めて全てを再検証してきた。沖縄について成長性の面で十分果実があると見込んできたが、他所へ進出することは今の段階では控える判断となった。これまで県にはサポートをもらい、地元の皆さんには感謝しかない」と答えた。
 安慶田副知事とボニエCEOは記者団が待ち構えた県庁を避け、那覇市のロワジールホテル那覇で面談した。面談後、県庁で記者団の取材に応じた安慶田副知事は「観光客のさらなる増加や地域振興に大きく寄与し、沖縄観光のブランド力向上につながると考えていた。非常に残念だ」と無念がった。その上で、引き続きUSJの誘致を要請するかとの質問には「知事や関係者と相談したい」と述べるにとどめた。
 政府はこれまで菅義偉官房長官自らUSJの沖縄進出に「政府としてできる限りの支援をしたい」と述べるなど、沖縄振興策として積極的に関与してきた。菅氏は11日の会見で「民間企業の経営判断だが、沖縄進出の見送りは極めて残念だ」と述べた。

■親会社交代で交渉ストップ 表明から1年で撤回

 米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」の運営会社、ユー・エス・ジェイ(大阪市)による沖縄進出の話が表面化したのは2014年7月で、当時は、カジノを含む統合型リゾート(IR)を念頭に、名護市のネオパークオキナワでの整備計画が進められていた。
 沖縄進出が表面化した直後の14年9月に、当時の仲井真弘多知事とユー・エス・ジェイ幹部が非公式に面談し、沖縄進出に関する課題などについて意見交換した。15年3月には、本部町の国営海洋博公園周辺を調査していることが浮上した。同5月末に和泉洋人首相補佐官とユー・エス・ジェイの森岡毅執行役員がそろって海洋博公園を視察するなど、官邸も関わる形で同公園での計画が急速に進められた。
 昨年7月には当時のグレン・ガンペル最高経営責任者(CEO)が県庁を訪れ、翁長雄志知事に沖縄進出に向けた支援を要請。しかし、15年11月に同社を買収し、親会社となった米企業が事業計画の再検証に入り、県や官邸との話し合いも事実上止まったままとなっていた。
英文へ→Universal Studios Japan cancels planned Okinawa theme park