「はいたいコラム」 感謝の前払いしませんか


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 島んちゅのみなさん、はいたい~。先日、福島県田村市常葉町へ和牛の繁殖農家を訪ねました。料理上手なお母さんで「お腹(なか)を空(す)かしていらっしゃい」と言われた通りにお昼に伺うと、ヨモギ、ヤーコン、カボチャの天ぷら、大根、油揚げと卵の煮物、紫蘇(しそ)の実と白菜の漬物、具だくさんのけんちん汁から赤飯まで、出るわ出るわ聞きしに勝る手づくりごちそう、すべて自家製農産物で、おかわりおかわり、ああ、もう食べきれませ~ん。気づいたとき私は、お赤飯のおにぎりと煮物のテークアウトを両手にずっしり持って、玄関に立っていました。

 そんな振る舞いの達人・国馬ヨウ子さんは、福島の畜産を担うさまざまな委員を務め、会合では必ず「お父さんのおかげ」「お父さんが出してくれたおかげ」と話すおしどり夫婦です。夫の照夫さんは農業に研究熱心で、克明に日記をつけては「ああ、今日もまずまずの1日だったなぁ」と振り返るそうです。常に感謝を忘れないのが夫婦の共通点でした。
 牧場では8頭の牛が「きよこ、なつこ、みどり、ゆりこ…」と全員名前をもらい、おだやかに過ごしています。国馬さんは、「牛も家族ですからね。大事にしてやればいい結果を出してくれます」と語りました。
 人も牛も、よい付き合いってそういうことなんですねぇ。家族も牛もお客さんも上司も部下も、どんな相手であれ、こちらが感謝を表せば、よい働きをみせるものです。まず相手を立てることが、結果的に自分の仕事(人生)のパフォーマンスが上がるということを、夫妻は実践していたのです。
 誰だって自分によくしてくれる人が好きです。尽くしてくれた人には感謝し、恩返しもしたくなります。もしも、自分も人に感謝されたいならば、何はともあれ、自分から尽くせば、幸せの歯車は回り始めるはずです。
 「ペイ・フォワード」という映画がありました。大まかに訳すと、前払い、先払い。もらった恩を相手に返すのではなく、恩を前払いしようという話です。手料理のごちそう、身内を褒める、感謝や労(ねぎら)いの言葉、相手が喜ぶことをみんなが率先して前払いすれば、日本中、世界中が笑顔でハッピー、平和になること間違いなしですね~。そう、このコラムもあなたのおかげ。読んでくれてありがとう~。(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
(第1、3日曜掲載)
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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。