辺野古抗議は「プロ市民」? 沖縄の基地ウソ/ホント


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新基地建設に反対し、ゲート前のテントで座り込む市民ら=16日午前、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ前

 「背負ったリュックに中国からもらったお金が入っていて、座り込み参加者に配っていると言われているが、中身は雨具だ」。米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、市民らが抗議の座り込みをする米軍キャンプ・シュワブのゲート前。雨の日に沖縄平和運動センターの山城博治議長があいさつでよく口にするフレーズだ。退院以降、雨にぬれないよう気を使う山城さんは「根も葉もない、いい加減な情報がまかり通っている」と語気を強める。

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 インターネットでは市民らの抗議行動をやゆする言説が多く見られる。座り込みをする市民を「プロ市民」と呼び、県外から来た一部の活動家だ、と定義するのもそうだ。

 ヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は「一体どういう定義か。いずれにせよでたらめだ」と苦笑する。辺野古に基地移設が浮上してから活動を続けるヘリ基地反対協。共同代表ら中心人物にはカンパから行動費として月1万円が充てられる。ただ、連日、辺野古漁港側のテント村に通う活動の足しにもならない。辺野古基金からヘリ基地反対協への支援分は、新聞などの意見広告とグラスボートの購入費に充てられた。日常の運営には一切使われていない。

 海上行動をする市民らの食費だけは反対協がカンパから負担している。座り込みの市民らには当然、日当は出ない。「座り込み参加者は弁当も自己負担。新基地を造らせないという思いで集まっている。それで何が“プロ”なのか」と安次富さんは指摘する。

 県外からも多くの人がゲート前に訪れる。定期的に訪れる中部の60代の女性らは「本土の人が沖縄だけの問題ではないと当事者意識を持って集まっている。震災などのボランティアと同じ。感謝している」と話す。その一方、「県外の人だけというのはとんでもない。団体に所属していない多くの県民が連日集まっている」。

 毎日の座り込みで動員を誇るのが島ぐるみ会議のチャーターバスだ。毎日午前10時に県庁前を出発するバスは誰でも乗れ、費用は一人往復千円。他にも各地の島ぐるみ会議が定期的にバスを出して連日100~200人がゲート前を訪れる。

 県民の中には反対していても抗議行動に参加できない人は多い。琉球新報社が4月、辺野古、豊原、久志の久辺3区で辺野古問題に対する聞き取り調査をしたところ、「反対」と回答してもゲート前の抗議に参加している住民はわずかだった。一様に「狭い地域なので目立った反対はできない」と声を落とした。

 ネットで流布する「プロ市民」という言葉について、沖縄国際大学の佐藤学教授(政治学)は「全国的に基地問題だけでなく、政府に対し、反対する行動を取る市民らを“プロ市民”と非難する言説が見られる。運動が限定的な一部の活動家によるものだと、矮小(わいしょう)化する印象を持たせようとするものだ」と指摘した。(宮城久緒)
 (随時掲載)

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