政治

<沖縄基地の虚実9>他県と違う一括計上 復帰後、全国家予算の0.4%

 「政府も、事実上は基地の存続とひきかえに、ばくだいな振興資金を沖縄県に支出-」。文部科学省が3月18日に公表した来春から主に高校1年生が使う教科書の検定結果で、政府見解の「基地と振興はリンクしない」と異なる記述が帝国書院の「新現代社会」のコラムの中であった。

 一方で政府の中でも島尻安伊子沖縄担当相が、2016年度沖縄関係予算の閣議決定前に、政府と対立している翁長雄志知事の姿勢について「予算確保に全く影響がないというものではない」と述べるなど、「基地と振興」のリンク論が常につきまとう。
 これらの言説について元沖縄総合事務局調整官で沖大・沖国大特別研究員の宮田裕氏(地域開発論)は「沖縄振興の本質を見失っている。なぜ基地問題が入るのか。沖縄振興は『償いの心』でやるのが原点だ」と指摘する。
 宮田氏が言う「償いの心」は沖縄が戦後27年間、米国統治下にあった特殊事情に起因する。沖縄は日本の財政援助から除外され、本土との社会資本・生活基盤の格差、所得格差が生じた。日本の沖縄への財政援助が始まったのは1963年で、米国の62年の「ケネディ沖縄新政策」により米国が経済負担の一部を日本に求めたことが発端だった。
 宮田氏によると63年の1人当たりの県民所得は301ドル、当時の為替レートで10万8千円、日本の国民所得の21万5千円の約半分だった。45~46年度は財政資料がないが、日本復帰前(47~71年度)の沖縄への財政援助総額は1232億円で、この間の日本の一般会計歳出予算の累計額68兆9577億円に占める割合は0・2%にすぎなかった。
 宮田氏は「(45~62年の)17年間、日本政府の財政から取り残され、スタートラインが違う」と強調する。また1972~2015年度の内閣府による「沖縄振興事業費」の総額は10兆3919億円(地方交付税を含まず)となり、日本の同期間の一般歳出予算2566兆2420億円に占める割合は0・4%だ。
 翁長知事や県は沖縄振興についての誤解を解こうと情報発信に努める。翁長知事は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる代執行訴訟の陳述書で沖縄関係予算について「『沖縄は3千億円も余分にもらっておきながら』というのは完全な誤り」と指摘した。昨年8月の東京での政府との集中協議後は報道陣に、国から都道府県への予算についてまとめた資料を配布し、誤解を払拭(ふっしょく)しようとした。県企画調整課はホームページで「(よくある質問)沖縄振興について」というコーナーを設け、誤解に反論している。
 企画調整課の資料によると、県の13年度の国庫支出金と地方交付税交付金の合計額は7330億円で全国14位(東日本大震災の復興予算が多く投入された岩手、宮城、福島県を除く)となる。国庫支出金は3737億円で全国11位、地方交付税は3593億円で全国15位だ。人口1人当たりで見ると国庫支出金と地方交付税の合計は51万8千円で全国6位。国庫支出金は26万4千円で全国1位になるが地方交付税交付金は25万4千円で全国17位となる。
 沖縄関係予算は県と各省庁の間に内閣府沖縄担当部局が入り、各省庁の予算を総合的に調整し予算を一括計上して財務省に要求する仕組みとなっていることも沖縄が特別視される要因になっている。
 沖縄振興開発特別措置法(現在の沖縄振興特別措置法、沖振法)は1972年の復帰に伴って施行され、政府は「沖縄振興予算」として沖縄関連の直轄事業や交付金を取りまとめてきた。復帰まで米国統治下にあり、予算折衝などを経験していない沖縄に配慮した措置だ。沖縄関係予算には国土交通省や農林水産省などの公共事業や学校などの文教施設費、不発弾処理など戦後処理の関係費も含まれる。
 他府県は各省庁に予算要求するため総額は見えにくいが、沖縄は各省庁の予算を一括計上するため総額がすぐ判明する。沖縄関係予算は全国同様、国の直轄事業費や国庫支出金がほとんどだが、他府県と予算要求の仕組みが違うことから沖縄が別枠で多額の予算を受けているとの誤解を受けやすくなっていると言える。(金良孝矢)