prime

<沖縄基地の虚実11>跡地の経済効果28倍 基地、発展の足かせに


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 22日午後1時半、翁長雄志知事は東京都にある総務省内の会議室にいた。室内では、国と地方の間で意見が食い違う際、どちらに正当性があるかを審査する国地方係争処理委員会が開かれていた。議題は「米軍普天間飛行場の移設を巡り、翁長知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消し処分は取り消すべきだとして、石井啓一国土交通相が出した是正指示の適否」。翁長知事は意見陳述に立ち、委員に向かってこう述べた。「一般の国民も多くの政治家も『沖縄は基地で食べている。だから基地を預かって振興策をもらったらいい』と沖縄に投げ掛ける。これくらい真実と違い、県民を傷つける言葉はない」

 翁長知事が例示した風説について、基地や基地跡地の経済効果などの側面で検証してみる。
 駐留米軍基地の活動による経済効果として、軍用地料やそこで雇用される人の所得、米軍などに対する財やサービスの提供、国が出す周辺土地への整備費、自治体などへの交付金などがある。
 一方、民間地の場合、その土地で行われる卸・小売業や飲食業、サービス業、製造業の売上高、不動産賃貸額などから経済効果を算出することができる。
 県は2015年1月、既に返還された米軍基地跡地の那覇新都心地区と小禄金城地区(ともに那覇市)、桑江・北前地区(北谷町)に関し、基地が返還される前と返還された後の経済効果を比較する資料を公表している。
 那覇新都心地区の場合、返還前は年間52億円だった活動による直接経済効果は返還後は年間1634億円となっていて、その倍率は32倍だ。小禄金城地区では返還前34億円に対し、返還後は14倍の489億円。桑江・北前地区は返還前3億円に対し、返還後は108倍の336億円だ。三つの地区を合計して返還前後を比較すると返還前が年間89億円なのに対し、返還後は28倍の2459億円に達している。
 雇用の側面から見た数字もある。那覇新都心地区では返還前が168人だったのに対して返還後は1万5560人で93倍となっている。小禄金城地区は返還前159人に対し、29倍の4636人。桑江・北前地区は返還前は雇用ゼロ、返還後は3368人の雇用を生み出している。
 これらの数字から、その土地が米軍基地の時代より、返還された後の方が経済的に高い実績を出していることが読み取れる。
 県政策参与の富川盛武沖縄国際大名誉教授(経済学)は「返還後の直接経済効果は土地が100パーセント利活用されていることと周辺との関連は考慮しないことという前提で算出されているため、県経済に与える実際のインパクトはもう少し小さくなるだろう」としつつ、「基地は、企業などのように持続的な成長を志向して蓄積資本を拡大する経済主体ではない。アジア経済が台頭し、外資が沖縄に進出しようとしている時代において、基地は沖縄の経済発展の手かせ、足かせになっていることに違いはない」と指摘した。(当銘寿夫)