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<沖縄基地の虚実12>県外と同様の「総額」 「受益率」上位は基地なし


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
都道府県別の国税徴収状況(2014年度)1~23位
都道府県別の国税徴収状況(2014年度)24~47位

 毎年末に「沖縄関係予算3千億円台」の報道が出るたびに、沖縄には他道府県と同様の国からの予算とは別に、「沖縄振興予算」が上乗せされているという誤解が流布される。その誤解はしばしば基地負担の「見返り」と見られ、増幅している。

 しかし「3千億円台」は他府県が同様に得ている予算の「総額」である。
 沖縄県は1972年に本土復帰するまで国に予算要求するノウハウが全くなかった。復帰に当たって沖縄開発庁(現内閣府沖縄担当部局)が設置され、県に代わって各省庁に予算要求する「一括計上」方式が採られ、年末に翌年度の予算総額が示されることになった。3千億円台は総額であって、基地見返りの別枠などではない。
 2013年度に各道府県が得た予算を人口1人当たりで割ると沖縄県は全国6位だ。旧国鉄や道路公団などの大型投資を含む公的支出額だと14位(12年度)で、他府県より群を抜いて沖縄に国の予算が投入されているわけではない。
 逆に、沖縄から国に納められる国税額は全国でどれほどの位置にあるか。
 国税庁の統計によると、所得税や法人税、消費税などを総合した14年の国税徴収額(徴収決定済額)は、沖縄県が約3117億円。全国47都道府県のうち29番目とほぼ中位にある。沖縄関係予算と国税支払額のバランスで考えても、他府県より「もらいすぎ」な状況ではないことが分かる。
 沖縄国際大の仲地健教授のまとめによると、県民1人当たりが受けている国からの予算額と、沖縄で支払われた国税のバランスを比べた「受益率」で見ると、沖縄の受取超過額は全国で16位(12年度)だ。沖縄よりも受益率が高い15県のほとんどに米軍基地はなく、「基地見返り論」に根拠がないのは明白だ。
 県民総生産に占める基地関連収入の割合は、復帰時の約15%から現在は約5%にまで低下した。一方で観光収入は伸び続け、今や基地関連収入の倍以上となっている。基地関連収入2088億円(13年度)に対し、観光収入は5342億円(14年度)。沖縄への入域観光客数はここ数年、過去最高を更新し続けている。
 沖縄観光コンベンションビューローの平良朝敬会長は、観光収入が伸び続ければ県民総生産額自体が拡大し、基地関連収入が県経済全体に占める割合はさらに小さくなると指摘。観光客が増えれば国に納める消費税の増加にもつながると分析する。
 平良氏は「沖縄の国税支払額は九州でも4位と中位だ。2、3位の大分、熊本とは僅差で、このまま経済が拡大すれば福岡に次ぐ九州2位の国税納付県になる」と指摘する。平良氏は「在沖米軍基地は戦略的な土地利用を妨げており、いまや発展の阻害要因となった」と強調する。
(島袋良太)