『大学的沖縄ガイド』 社会や文化 多面的に捉える


社会
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『大学的沖縄ガイド』沖縄国際大学宜野湾の会編 昭和堂・2484円

 今や書店、空港の売店などに入ると、沖縄を巡るためのガイドブックが所狭しと並べられ、どれにすればよいか迷うほどである。中には食や雑貨などのテーマに絞ったもの、通のみが歩くといった裏道案内を売りにしたものまで、種類も豊富である。本書は題名に「大学的」と冠するように大学人が執筆することを目玉にしたもので、全国各地を紹介するシリーズの一冊にあたる。本シリーズの特徴でもあるが、片手に携え各地を巡るいわゆるガイドブックとは異なり、沖縄の社会や文化をより豊かに、多面的に理解するためのガイドブックとなるような構成をとっている。

 全4部からなり、第1部「沖縄ナウ」では基地問題(前泊博盛)、宿泊産業(宮森正樹)、エコツーリズム(上江洲薫)、平和と慰霊塔(藤波潔)など沖縄を取り巻く問題を描き、日々ニュースなどで耳にすることの多い問題や日常をコンパクトに紹介する。第2部「沖縄を楽しむ」では、年中行事であるハーリー・綱引き・エイサー(石垣直)、闘牛(宮城邦治)、空手(新垣勝弘)、キャンプやマラソン(名嘉座元一)などを切り口に、県外から見れば独特の、沖縄の人々にとっては日常の風景がどのような変容のもとにあるのかを描く。

 第3部「琉球王国の世界」では、発掘相次ぐ旧石器時代の人骨からグスク(上原靜)、首里城や独特の形をした墓(田名真之)などの歴史的背景を解説し、現地を巡る際のスパイスとなるような工夫がなされる。第4部「沖縄アラカルト」では、島言葉や歌(西岡敏)、芸能(狩俣恵一)、食(宮城邦治)など日常に関わる多彩なテーマを取り上げる。また、随所に配されたコラムも沖縄の文化や事象をコンパクトに解説しており、読み応えがある。

 本書は、例えば基地問題を「基地の値段」という側面からひもといたり、歓迎の意を表す「めんそーれ」を言語学的に解説するなど、沖縄を豊かに、多様に捉えるためのガイドとなってくれる一書である。ウマンチュに一読を乞いたい。(山田浩世・沖縄国際大学非常勤講師)

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 大学的地域ガイドシリーズ 大学教員らが専門知識を生かし各地を紹介するシリーズ。北海道、福岡、愛知に続き、沖縄で10冊目。

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