【島人の目】米軍属女性遺棄事件に思う


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 米軍属女性遺棄事件の成り行きを、主にネットを使って遠いイタリアで追い掛けながら気付くことがある。それは、沖縄の置かれた現実と被害者女性への多くの同情の声と共に、いわゆるネトウヨ系(ネット右翼、政治家や学者、文化人などを含む)の人々による、沖縄ヘイトの感情があらわな意見開陳や書き込みもまた目立つ、ということである。

 後者は亡くなった女性を悼むことも忘れて、基地の過重負担に怒る沖縄県民を金欲しさのために騒いでいる、という論調で弾劾する。そのような意見を持つ人がよく持ち出すのは、米兵や軍属の犯罪率は一般県民と比べても低く、県民が特別の恐怖を感じなければならないような状況ではない。また、抗議運動には、政府が沖縄支援策を積み増してくれるという実利もあることが県民を基地反対に駆り立てる云々(うんぬん)、という沖縄蔑視に満ちた内容が多い。

 言うまでもなく米軍属の犯罪に対する人々の過敏な反応は、数字や比率の問題ではなく、ひたすら「沖縄の過重負担」だ。あるいは県民が「過重負担と感じている」現実だ。それを取り除かない限り真の問題解決はあり得ないし、米軍(属)への怒りも収まることはない。そのことに目を向けない主張は、例えば沖縄の米軍専用施設は日本全体の74%ではなく23%、などという議論と同じで、数字を使った印象操作にしか見えない。

 今回の事件でもまた安倍首相や政権幹部が「米軍への再発防止申し入れ」発言をしている。相変わらず口先だけの決意にも見えて気持ちが萎(な)えるが、ここで心が折れてはならない。

 沖縄はあくまでも不条理の是正を目指すべきだ。諦めて口をつぐんだり抗議行動をやめれば、それこそネトウヨをはじめとする沖縄差別者たちの思うつぼである。
(仲宗根雅則、TVディレクター)