中国人向け沖縄数次ビザ急増 15年6万件、導入時の約7倍


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 外務省が発給する中国人個人観光客向けの沖縄数次査証(ビザ)件数が急増している。2015年は前年比3・3倍の6万298件となり、過去最高を更新した。導入された11年は8964件で、4年間で6・7倍と大幅に増加した。外務省は(1)消費税免税制度の拡充(2)格安航空会社(LCC)の相次ぐ就航(3)継続的な訪日プロモーションなどの奏功―を急増の理由に挙げている。

 琉球大観光産業科学部の下地芳郎教授は「取得件数が伸びてきたのは(中国人観光客の)沖縄に対する関心の表れだ。導入の成果として一定の評価ができる」と述べた。一方で15年に沖縄を訪れた中国人観光客は約30万人に上り、下地教授は「富裕層などを対象に発給する数次ビザはまだ6万件にとどまり、今後富裕層に評価されるリゾート地としての努力が必要だ」と指摘した。

 沖縄数次ビザは、導入2年目の12年に前年比2倍の1万7998件と大幅に伸びた。13年は尖閣諸島の国有化による日中関係の悪化などで訪日中国人観光客が激減し、沖縄数次ビザの発給件数も9273件までに下がった。その後、円安傾向や沖縄と中国を結ぶ路線の新規開設が相次ぎ、来沖する中国人観光客が再び伸びている。14年の件数は12年を上回る1万8353件に回復した。

 沖縄数次ビザは個人観光で、沖縄に1泊以上することが条件。対象者は(1)十分な経済力を有する人とその家族(2)過去3年以内に日本への短期滞在での渡航歴がある人で、一定の経済力を有する人とその家族―。有効期間3年で、1回の滞在期間は30日以内。
(呉俐君)

<用語>沖縄数次ビザ
 中国人の個人観光客に対し、最初の訪日で沖縄に1泊することを条件に発給し、3年間の有効期限内であれば何度でも使用できる査証(ビザ)。民主党政権時の2011年7月に沖縄振興の一環として導入された。1回当たりの滞在期間は30日以内。12年7月からは東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県にも導入している。