「米軍は沖縄を軽視」 基地問題、ジョン・ミッチェル氏に聞く


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基地汚染管理や教育研修の内容から、米軍は地元を軽視していると指摘するジョン・ミッチェル氏 =10日、那覇市内

 基地汚染問題などに詳しいジャーナリストのジョン・ミッチェル氏(41)=英国出身、神奈川県在住=がこのほど、那覇市内で琉球新報のインタビューに応じた。ミッチェル氏は日米地位協定の壁などで情報が制限された基地内の状況を把握することが「民主主義の実践につながる」と強調。米海兵隊の研修の内容や米軍基地の環境事故対策の実態から、米軍が地元を「軽視している」と述べた。基地問題を巡る県民の非暴力の抵抗運動は正当性を持っていると強調した。(聞き手・島袋良太)

 ―先日、「沖縄は基地問題を政府との交渉のてこに使っている」などと記した米海兵隊の教育研修資料を入手した。

 「米軍人と話していると、多くが研修資料と同じような認識を持っていた。例えば『米軍人の犯罪率は沖縄県民より低い』などだ。これは基地内で発生している犯罪を除いて算出されており、そもそも公平な統計ではない。そうした教育プログラムが存在するはずだと思った」
 「一方で沖縄の米兵たちは土地の強制接収、悲惨な事件事故、環境汚染といった歴史、沖縄における民主主義の欠如を知らない。彼らは『米兵の99%は善良だ』と主張するが、米軍という組織が沖縄にうそをついてきた。兵士らはマルコムX、マーチン・ルーサー・キング、ガンジーらを敬愛しているが、阿波根昌鴻氏を知らない。米軍が隠してきたからだ」

 ―沖縄の基地汚染問題を調べてきた。

 「嘉手納基地の計画では、有害物質の流出事故があった際の米軍関係者の避難対策を書いていた。だが周辺住民の安全の確保には全く触れていない。日本側の役割ということかもしれないが、米軍はその前提となる地元への情報提供も十分に行ってこなかった。県民軽視の表れだ。米軍の内部記録を調べると、2010~15年に嘉手納基地で258件の有害物質の流出事故があったが、日本政府は13件しか把握していなかった」

 ―米軍が立ち入りを拒み、汚染の実態が県民には把握できないと指摘される。

 「日米地位協定は米軍基地内で何が起きているのかという情報に対する私たちのアクセスを拒んできた。これを変える必要がある。一方で私は、米軍の内部告発者や退役軍人らへの取材に加え、米国の情報公開制度を使い汚染の実態を調べてきた。地位協定と関係なく情報を入手できる。地元の行政機関、市民団体、研究者、報道機関などもこの仕組みをもっと活用すべきだ。必要な情報を入手することで、民主主義を実践できる」

 ―19日に県民大会がある。

 「沖縄の人たちは県民大会や選挙、議会決議などで平和的な主張を続けてきた。私がすごいと思うのは、非暴力の抵抗である点だ。自分はウェールズ人で、地元では長くIRA(アイルランド共和軍)のテロ問題を抱えてきた。県民大会は人々が不公平を変えるため、しかし平和的に声を上げる行為で、尊敬に値する。米国はその声を受け止めるべきだ」

 ―海外と比べると沖縄の運動は穏健過ぎて無視されているとの指摘もある。

 「それは違う。平和的な抵抗は最強の武器だ。平和的に抵抗している人たちが残酷に扱われる様子が世界中に発信される。老人が機動隊に排除され、カヤックに乗っている丸腰の市民が屈強な海上保安庁職員に海へと沈められる。そういう行為を見ると、世界の人々はこの抵抗運動と県民の主張がいかに正しいかを理解する」