係争委、適否判断せず 国と県に協議促す 辺野古承認取り消しの効力続く


この記事を書いた人 志良堂 仁

 【東京】名護市辺野古の米軍新基地建設計画を巡り、翁長雄志知事による埋め立て承認取り消し処分に対する石井啓一国土交通相の是正指示の適否を審査する第三者機関の国地方係争処理委員会(小早川光郎委員長)の第9回会合が17日、総務省で開かれ、委員会は是正指示の法的な適否を判断しないとの結論に至った。委員会後の記者会見で小早川委員長は「議論を深めるための共通の基盤づくりが不十分なまま、一連の手続きが行われてきたことが国と沖縄県との間の紛争の本質的な要因」などと述べ、双方にあらためて協議することを促した。一方、埋め立て承認取り消しの効力は続いており、専門家からは「実質的な県の勝利」との見方も上がった。

 小早川委員長は法的な適否を判断しなかった結論について「例外的な措置」とし、国と県に対して「是正指示にまで立ち至っている一連の過程は、国と地方のあるべき関係からは乖離(かいり)している」と指摘した。その上で「国と県は米軍普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯(しんし)に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力することが問題解決に向けての最善の道である」と述べ、普天間の返還に向けて双方が再協議するべきだとの見解を述べた。委員会は結論についてまとめた文書を21日までに県と国交省に到達するよう郵送する。

 国地方係争処理委員会の審査は、国と県との裁判の和解条項に基づいて進められていた。同委員会は是正指示の法的な適否判断を避けたが、現状では知事による埋め立て承認取り消し、国交相による是正指示の双方の効力がある状態となっている。

 今後は県が是正指示の取り消しを求める訴訟を提起するか、是正指示に従わず、国側が不作為の違法確認訴訟を提起するのかの二つの流れが想定される。国と県の協議を促した同委員会の意見に双方が沿った形で協議をした場合、裁判での確定判決の時期は従来の想定よりも遅れる見通しとなった。

 翁長知事は17日夜、都内で記者団の取材に応じ「精査して18日に記者会見し、見解を述べたい」などと述べた。一方、中谷元・防衛相は「国の指示は違法とは認められなかった」と強調し、和解条項に沿う形で県側が裁判を提起すべきだとの認識を示した。