「はいたいコラム」 心満たすサービスとは


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 島んちゅの皆さん、はいたい~! 皆さんはサービスが好きですか? わたしは大好きです。サービスセール、サービスランチ、家族サービス、リップサービス…。そもそもサービスとは、経済用語で「売買した後にモノが残らず、効用や満足などを提供する形のない財」なのだそうです。なるほど、形はないけどうれしいものなんですね。日本のサービス産業は実にGDPと雇用の7割以上を占め、国の経済を支えています。

 このほど「第1回日本サービス大賞」が発表されました。国内のサービス提供事業者を対象に、きらりと輝く優れたサービスを表彰する初めての賞です。全国からの応募853件のうち内閣総理大臣賞は、JR九州の「ななつ星in九州」。言わずと知れた豪華列車は最安値でも1泊2日25万円で、既に来年まで完売という人気ぶりです。本来目的地までの移動手段であった列車に、滞在する時間こそが最上のステータスだというホテルさながらのサービスを持ち込んだことが評価されたのでしょう。

 また地方創生大臣賞の一つは、旭山動物園の「行動展示」です。曲芸ではなく、動物が本来持っている「走る・飛ぶ・泳ぐ・捕食する」といった動きを見せることで、命の尊さ、美しさ、自然界の営みを伝え、多くの人に喜ばれました。行動展示で、動物園の楽しみの質を変える革命を起こしたのです。

 同じく地方創生大臣賞を受賞したのは、一般社団法人日本食べる通信リーグ・NPO東北開墾による「食べる通信」です。東北を起点に全国31カ所で展開する食べ物つき情報誌をご存知でしょうか。「おきなわ食べる通信」もあるんですよ。生産者の物語を伝える情報誌と食べ物を届ける他、産地ツアーやイベントで読者である都市の消費者と生産者との「つながり」を産み出しました。これは地域にやる気と誇りをもたらし、食の選び方や流通を変えつつあります。

 3事業の共通点は「物語」をサービスとして商品化したことです。よい旅とは、目的地よりその過程であり、よい動物園とは、人工より自然の生態系であり、よい食べ物とは、味だけでなく作り手の物語の上にあるということです。これからのサービスは、より知性や精神性といった心の満足度が問われます。まさに、ぬちぐすいの時代ですね。

 (フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
(第1、3日曜掲載)
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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。