「悲劇、繰り返さない」 被害者同世代の若者ら、葛藤越え決意


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
若者代表として、壇上でメッセージを掲げるシールズ琉球の(左から)元山仁士郎さん、平良美乃さん、眞鍋詩苑さん、小波津義嵩さん=19日午後、那覇市の奥武山陸上競技場

 19日の沖縄県民大会には、将来への希望を抱きながら命を奪われた女性と同年代の若者たちも登壇し、女性の死を悼む言葉を静かに紡ぎながら、沖縄の過去・現状への怒りを吐き出した。自らの中にある葛藤と向き合い、平和な沖縄を実現するために発した若者の切実な訴えに参加者は聴き入り、共感を寄せていた。

 安倍晋三首相と本土に住む人たちに「今回の事件の『第二の加害者』はあなたたちだ」との強い批判の言葉を発したのは、辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議共同代表として登壇した玉城愛さん(21)=名桜大4年。時折涙を拭い「同じ世代の女性の命が奪われる。もしかしたら、私だったかもしれない。もう絶対に繰り返さない」と訴えた。

 名桜大3年生の小波津義嵩さん(20)は「沖縄から誰も傷付けない新しい平和の築き方を日本、そして世界で実現させましょう」と呼び掛けた。

 スピーチ内容は彼らが、それぞれ“借り物”ではなく、自分で考え悩み抜いた言葉だった。

 名桜大3年の眞鍋詩苑(しおん)さん(22)は、県外出身者として自身も基地被害を押し付けている「加害者」ではないかとの文言を盛り込むかどうかを悩んだ。

 ただ沖縄への共感は抑えられなかった。「無関心だったことへの罪悪感が一番ある。本土と沖縄を分断して、沖縄を外から見るような見方を乗り越えたい」と舞台上で自身の思いを語った。

 「基地があるが故の事件だと思いつつ、そうだとは言いたくなかった。言えない気持ちがあった」。平良美乃(よしの)さん(23)=琉球大大学院1年=が舞台で読み上げた詩の一節だ。事件事故の根源である基地を撤去したいという希望。一方で基地撤去を前面に出すことで、1人の女性の命の重みが「基地問題という大きい黒い布に包み込まれてしまうのではないか」という思いもあった。女性の死が、政治問題に飲み込まれる不安だった。

 友人たちにも同じような葛藤を抱く人が多かった。「断定的でなくても、伝えることに意味があるのではないか」。「ぐるぐるした気持ち」をそのまま詩に乗せた。

 若者たちのスピーチに心を動かされたという那覇市の栄野元到さん(55)は「これまでは戦争体験者が平和をリードしてきたが、これからは若い人たちが引っ張っていくことが必要になる。政府にもこの声を聞いてほしいと思う」と話した。