戦の痛み二度と 平和の実現 誓う 慰霊の日


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
強い日差しの中、平和の礎に手を合わせる家族ら=23日午後3時ごろ、糸満市摩文仁の平和祈念公園(諸見里真利撮影)

 戦後71年を迎えた慰霊の日の23日、糸満市摩文仁の平和祈念公園で開かれた沖縄全戦没者追悼式をはじめ、各地で慰霊祭が営まれ、沖縄戦で犠牲となった20万人余を悼んだ。直前に米軍属女性暴行殺人事件があり、沖縄戦直後から続く不条理が再び顕在化した。慰霊祭に参列した幅広い世代が沖縄の変わらぬ現実に怒りを表し、全戦没者追悼式であいさつした安倍晋三首相には2年連続で会場から「帰れ」などやじが飛んだ。3月の安保法施行で集団的自衛権行使が可能となり、自民党が改憲を志向していることに対し、戦争体験者から「子や孫が戦争に行かされると思うと戦没者も浮かばれない」など懸念の声も上がった。

 県内各地で30度を超える真夏日となった23日。沖縄全戦没者追悼式が開かれた糸満市の平和祈念公園に集まった沖縄戦体験者や家族、関係者は戦没者のみ霊を悼むとともに炎天下、恒久平和を誓い合った。

 安保法が施行され、日本が集団的自衛権を行使できる国となって初めての慰霊の日。改憲に意欲を示してきた安倍晋三首相に参列者からやじが飛び交う中、翁長雄志知事が「恒久平和を願う」と力を込め、宮城篤正県遺族連合会長も「戦争を二度と繰り返してはならない」と強調。そのたびに参列者から拍手が湧き起こり「新基地建設反対」の言葉に歓声が沸いた。

 平和の礎に戦死した兄が刻銘されているという宮城義治さん(75)=宜野湾市=は「子や孫が戦争に行かされると思うと、戦没者も浮かばれない。憲法は変えるべきではない。基地をなくし、平和な沖縄に戻してほしい」と強調する。

 各地の慰霊祭でも、安保法などに危機感を示す声が相次いだ。県立第三中学校と県立第三高等女学校などの同窓生でつくる南燈同窓会の松田憲和会長(77)は、慰霊祭のあいさつで安保法に触れ「平和憲法を守ることが最も大切だ。過ちを繰り返さないことと、新基地建設阻止に向けて邁(まい)進することを強く誓いたい」と述べた。

 「憲法9条を絶対に変えさせてはいけない」と強調するのは、糸満市摩文仁の沖縄師範健児之塔で慰霊祭に参加した、元知事で鉄血勤皇隊だった大田昌秀さん(91)。「戦争を生き延びた者の役割として、沖縄を二度と戦場にしてはいけない」と話した。

 一中健児之塔慰霊祭を主催した養秀同窓会の大田朝章会長は式典後、「個人的な意見」としつつ「少年たちが駆り出され、戦死を遂げた。彼らの夢も希望も壊した戦争は二度とあってはならない。そのためにも安倍政権の暴走を止めないといけない」と言葉に力を込めた。