高江着陸帯 反対住民に撤去指導 県、強制措置「検討せず」


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ヘリパッド建設に反対する住民や支援者に対し、「注意書」を読み上げる県北部土木事務所の職員(右端)=28日午後2時半すぎ、東村高江区

 【東・国頭】沖縄県は28日午後、米軍北部訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)新設を阻むために、東村高江区周辺のゲート前に置かれた車両やパイプなどを撤去することを求める「文書指導」を、ヘリパッド新設に反対する住民や支援者らに行った。当初は文書を車両などに貼り付ける方向だったが、反対する住民らが十数人駆け付けたため、県は現場の混乱を避けようと貼り付けは行わず持ち帰った。住民らは政府の工事停止期間が6月末で終わるため、7月以降、工事が再開しないか警戒を強めている。

 「注意書」は「道路管理者の許可を得ずに設置された仮設テント、放置車両、横断幕、単管パイプその他の物件などを速やかに撤去してください」と記し、撤去を求めたが、強制力は伴わない。県は強制力を伴う措置について「現時点で検討していない」としている。

 県北部土木事務所の職員7人は午後2時すぎ、住民らが座り込みをしている県道70号沿いのN1ゲート付近に到着。車両やパイプなどに「注意書」を貼り付けようとしたが、住民らは事前に連絡がなかったことに抗議し、説明会開催を求めた。職員は「注意書」を読み上げたが文書の貼り付けは行わず、約30分後に引き揚げた。県は後日、再度現場で看板の設置や文書の貼り付けを行う意向だ。

 住民らは「知事は北部訓練場へのオスプレイ配備に反対している。文書指導は矛盾しているのではないか」「どうして県がこのような文書指導をするのか説明が必要だ」などと主張した。

 一方、完成したヘリパッドではオスプレイの訓練が激化している。住民らによると、27日午後2時すぎから午後10時まで離発着の訓練が確認された。28日も県の文書指導の前後でオスプレイが県道付近で低空飛行し、基地内のヘリパッドで離着陸を繰り返す様子が見られた。

 県の対応について、区内に住む安次嶺雪音さん(45)は「7月から工事が始まるかもしれない。車などを撤去するとあっという間に造られてしまう。県もヘリパッドを造らせない方向で対応してほしい」と求めた。

 東村高江を囲むように新たに6カ所のヘリパッドを新設する工事は、2カ所が完成した2014年7月以降、残り4カ所の工事が中断している。16年3~6月は国の特別天然記念物ノグチゲラなどの営巣期のため、重機を使う工事は控えられている。政府はヘリパッドの完成を前提に年内に北部訓練場の一部を返還する意向を示している。建設に反対する住民や支援者らは、7月1日からゲート前で24時間体制の警戒を行う方針だ。

◇知事「自主撤去促す」

 翁長雄志知事は28日午後、県庁で記者会見し、米軍北部訓練場でのヘリパッド新設に反対する住民らが置いた車両などを撤去するよう同日、文書指導を行ったと発表した。翁長知事は「口頭指導と同様、行政指導の一環だ。自主的な撤去を促すもので、強制的な処分や命令ではない」と説明し、県として適切な指導をしたと述べた。

 ヘリ着陸帯建設は、同訓練場の過半の返還に伴う計画である一方、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが運用される計画となっている。

 翁長知事は「返還はSACO(日米特別行動委員会)合意も含めて地元も了解している」とした一方、SACO合意以降、オスプレイ配備という「状況変化もあった」と指摘。「配備を撤回すべきという中でこの問題も収斂(しゅうれん)されていくのではないか」と述べ、新設に難色を示した。