豊見城市、南風原町 就学援助に民生委意見 「申請を抑制」関係者懸念


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 経済状況が厳しい家庭の小中学生に給食費や学用品代を補助する「就学援助制度」の申請に当たり、民生委員の所見を必要とする自治体があることが分かった。豊見城市では、民生委員が申請者を訪問し「携帯電話の所有」や「車の種類」などを調査する。多くの市町村が、自治体の所有する所得証明などで判断する中で、民生委員の過度な介入に、関係者からは「申請の抑制につながりかねない」などの懸念が上がった。

 同市では、全ての申請者に家庭訪問を実施。その際、民生委員は調査表を基に聞き取りを行う。調査表には、月収や資産状況などの他、「家の間取り」や、自家用車について「バイク、普通乗用車、軽自動車、ワンボックスカー」などから選ぶ設問もある。

 同市教委の担当者は「収入だけでは分からない家庭状況を把握するための調査。収入などと総合的に見て支給を判断する」と話す。一方、市民や民生委員から必要性を疑問視する声が上がっているとして「調査の在り方について見直しを検討する」という。

 南風原町では、申請書に民生委員の記入欄として、困窮の理由を、生計維持者等の(1)死亡(2)求職中または失業中(3)離婚-などから選択する設問がある。ほかにも民生委員が所見を記入できる。同町教育委員会の担当者は「家庭状況を把握し、特殊事情があると判断すれば、支給の所得基準を緩めることもある」と説明。ただ「家庭状況の確認方法は民生委員に任せている」と話した。

 しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄の秋吉晴子代表は「市町村は課税証明を見たら、家庭の経済状況が分かるはずだ。利用までのハードルが格段に上がり、申請をやめる人も出てくると思う。受給させないための嫌がらせのように感じる」と指摘し「憲法の教育を受ける権利を保障するために、必要な人がきちんと受給できるようにしてほしい」と望んだ。

 困窮家庭の子どもの学習環境を支える就学援助は、子どもの貧困対策に有効とされており、子どもの貧困対策を強化する県も充実を目指す。一方で、同制度は市町村が実施主体のため、所得の基準額や支給対象などに市町村の格差があり、課題となっている。