公立保育所民営化・識者談話 喜友名静子氏 沖縄キリスト教短大名誉教授


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喜友名静子氏

■法人園の指導的役割も

 子どもを育てるには手間もお金もかかる。保育や幼児教育を未来への投資として惜しまない価値観が社会全体で共有されていれば、全てを民間に任せても問題ないかもしれない。しかし日本は福祉や教育への支出がOECDでも飛び抜けて低く、子どもにお金をかける意識が低い。経済的に余裕があっても、保育の質よりも値段を重視して安く抑えたいと考える保護者もいる。子どもに対する社会の意識が成熟していない。

 このような中でコスト削減のために民営化するのは切り捨てにしかならない。保育園の運営費の約8割は人件費であり、削減分は保育士の給与に跳ね返る。法人化された後、給与は下がり、福利厚生や研修などの処遇も悪くなって他業種に移る保育士の事例も聞く。民営化は、国がうたう「子育て支援」や保育士の待遇改善に逆行している。

 障がい児が(民営の)法人への入園を断られる事例はいくらでもある。保育園はただ預かればいいのではない。命がかかっている。民間は力の差が大きく、安全が確保できなければ断るのも仕方がない。公立保育所は公の責任で子どもを預かる最後の受け皿だ。

 公立は、民間にとって保育の質や保育士の給与の基準となる。民間は親に迎合した保育に走ることも、内部規約で保育士の給与を低く抑えることも可能だ。最低限の基準を公立が示す必要がある。公立保育所を存続させて実践と研究の場として専門性を高め、地域の幼児教育の中核として他の法人園の指導的役割を果たしてほしい。(保育学)