「はいたいコラム」 海を守るウニの畜養


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 島んちゅのみなさん、はいたい~! 先ごろ、ノルウェー大使館で宮城県南三陸町とノルウェーによる「ウニ畜養プロジェクト」の調印記念式典がありました。ノルウェーと言えばサーモン! 世界有数の水産大国ですが、ウニとどう関係するのでしょう~。

 ことの発端は南三陸の「磯焼け」。ウニが大量発生して藻場が枯れる深刻な問題を抱えていました。震災前後からのさまざまな事情により、漁村の暮らしが変わり、生態系が崩れていたのです。

 ウニは海藻を餌として育ちますが、それを漁師が程よく捕ることで、ウニの数は保たれ、健康な海岸が守られてきました。藻場、ウニやアワビ、そして漁村の暮らし。3者あってこその均衡です。

 こういうのを「里海」と呼びます。人の手が加わることによって自然環境が保たれ、かつ生産性が高められている海岸部の営みです。「里山」と同じく、昔ながらの農山漁村の暮らしは決して自然を破壊するものではなかったのです。

 しかし、あるときこのバランスが崩れて、ウニが大量発生し、藻場が荒らされます。増えたウニは栄養不足で中身はすかすか。身は3%という状態にまで陥っていました。売り物にならないウニを漁師は捕りません。藻場は砂漠化し、ウニの水揚げは震災前の半分以下になっていました。

 困っていたのは宮城県漁協歌津支所。しかし青年部の高橋栄樹さんは、復興支援のノルウェー視察で、なんと、ノルウェー国立食品漁業養殖研究所のペレット飼料でウニを畜養する技術と出合ったのです! 身のないウニでも畜養すれば、商品価値のあるウニが出荷でき、漁村は活性化、藻場の回復にもなります。なんてハッピーな循環なのでしょう。

 しかもこの磯焼け、ニュージーランド、南カリフォルニア、アラスカなどあらゆる海岸部共通の課題でもありました。試食したウニの味はクリーミーさを保ちながら上品な味わい~。こ~んなにおいしいウニさんを“食害”なんて悪者にしたくないですよね。

 沖縄本島北部ではシラヒゲウニが激減し、禁漁が広がっているそうですね。いまや「SATOUMI」は国連でも使われる万国共通語です。同じように海岸を持ち、水産物を恵みとする者同士、連携の相手はきっとこの海のどこかにいるはずです。島のウニ丼が復活する日を期待しています。(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
(第1、3日曜掲載)

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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。