投票所バリアなくして 候補者名周囲に漏れ/車いす入れず


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代理投票で候補者名を読み上げられ「不快な思いをした」と話す喜納盛安さん=8日、那覇市壺川

 10日の参院選投開票日を前に、2011年の障害者基本法改正によってバリアフリーが義務付けられている投票所で、依然として課題が多いことが分かった。NPO法人沖縄県脊髄損傷者協会(仲根建作理事長)が14年に県選挙管理委員会に要望した、投票所のバリアフリーのマニュアル策定などはいまだ実現していない。県選管は市町村にバリアフリーの取り組みを要請しているが、各投票所によって対応が大きく異なっている。

 車いすで生活する喜納盛安さん(47)=那覇市=は、6月の県議選の際、期日前投票のため首里支所を訪れた。「エレベーターは奥行きがなく狭かった」と振り返る。手が動かないため代理投票を利用した。代筆者が候補者を1人ずつ指さし、喜納さんはうなずいて意思表示した。しかしその後、候補者名を読み上げて確認された。「周囲に聞かれて不快だった」と語る。秘密投票の原則を守るため「名前ではなく番号にするなど工夫してほしい」と改善を訴えた。

 代理投票は本人の意思確認が不可欠で、県選管は市町村への説明会で「記載した候補者名を再度本人に確認する」よう呼び掛けている。喜納さんは「以前投票した、那覇市内の他の投票所では、読み上げられなかった」と語り、各投票所によって対応が分かれていることがうかがえる。

 県脊髄損傷者協会の仲根理事長は、投票所入り口で靴が邪魔で車いすが入れない経験をした。隣では足の悪いお年寄りが靴を脱ぐのに苦労していた。「お年寄り用のいすを置く、職員が車いすの進路を確保するなどの小さな配慮で変わることだ」と感じている。

 同協会は14年、「選挙におけるバリアフリー推進」を目的としたマニュアル策定などを求める要望書を県選管に送付した。要望を受けて県選管は、市町村に向けた説明会で、マニュアル策定の呼び掛けや、障がい者が入場しやすい設備にする配慮などを要請している。

 県選管の担当者は「投票所の主体は県ではなく市町村になる。投票所はそれぞれ異なる。県として策定するならどのようなマニュアルの対応が効果的なのか検討していく」と話し、要望書に対する文書での回答は今後検討するという。
(半嶺わかな)