NISA 県内3万4000件超 もたつく景気、足踏みも


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 2014年に始まった少額投資非課税制度(NISA)で、県内の金融機関が持つ口座数が今年3月末時点で少なくとも3万4595件に上ることが分かった。県内でのNISAの利用状況が明らかになるのは初めて。本紙が県内でNISAを取り扱う金融機関に聞き取り調査を行った。政府が「貯蓄から投資」をスローガンに掲げる中、各金融機関ともキャンペーンなどを通じて、さらなる需要の掘り起こしに取り組んでいるが、乱高下する株式市場など国内景気がもたつく中、「足踏みしている状況」(証券会社関係者)との声もある。

 県内でNISAの開設口座数が最も多いのは琉球銀行の1万1600件で、次いで沖縄銀行の8163件、沖縄海邦銀行の6627件と地銀3行が上位3社を独占した。県内証券各社には数千口座が開設されている。15年12月末からの増加率を見ると、琉銀が0・9%、沖銀が1・2%の微増にとどまり、海銀はマイナス0・1%と微減した。地銀関係者は「制度が始まった当初はスタートダッシュもあり、各行とも口座数を積み上げたが、最近はどこも伸び悩んでいるのが実情だ」と指摘した。

 正確な数字はないが、どの金融機関も開設口座の半分程度は「休眠状態」としており、NISAを通じた投資家の割合はより少なくなる。加えて、今年4月に始まったジュニアNISAは、いずれの金融機関も開設口座数が1桁か2桁台と低調な滑り出しだ。証券会社関係者は「NISAもそうだがジュニアNISAはそれ以上に手続きが煩雑で、顧客どころか販売する側も扱いに手をこまねいている状況だ」と指摘した。

 NISAの伸び悩みについて、地銀関係者は「NISAがスタートした14年1月の日経平均株価は約1万6千円で、今の株価と同じ状況だ。スタート時からNISAを始めた人は途中で売り抜けた人以外はもうかっていない」と指摘した。日銀那覇支店は県内の口座数について「沖縄は年収に占める貯蓄率の割合が全国最下位のため、なかなかNISAを含めた投資を通じた資産形成に向く土壌がないのではないか」と分析した。

 金融庁によると、全国のNISA口座数は3月末現在で、1012万809件。累計買い付け額は7兆7554億708万円で、うち、2016年の買い付け額は1兆3109億2317円。年代別では口座数、買い付け額ともに30代が多く、最も少なかったのは20代だった。

<用語>少額投資非課税制度(NISA)
 年120万円を上限に株式や投資信託に投資して売却益や配当を受け取っても税金がかからない制度で、20歳以上を対象に14年1月に始まった。契約する金融機関により、取り扱う商品は異なるが、年間に1口座しかつくることができない。15年から1年ごとに契約する金融機関を変更することが可能となった。