【島人の目】イタリアもEU離脱?


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 イギリスが国民投票によってEU(欧州連合)離脱を決めた「事件」は、ヨーロッパのみならず世界中に衝撃を与えた。欧州は各国間の血まみれの闘争やいがみ合い、謀略など多くの間違いに満ちた歴史を経て、対話と寛容と協調の尊さを学びそれを民主主義の枠組みの中で最大限に生かす術(すべ)を獲得した。それがEUである。EUは加盟国間の経済の結び付きのみならず、政治的な統合も目指すことで究極の戦争回避装置という役割も果たしてきた。

 EUは英国を失うことによって大きなダメージを受ける。しかし離脱によって最も大きな損失を被るのは、ほかならぬ英国だ。EUという世界最大の経済ブロックに属するメリットを捨てるからだ。EU離脱による英国の利益はほぼ何もない。が、損失は甚大だ。

 ところが実はイタリアにも英国に似た状況がある。英国がEU離脱を決めた直前の世論調査によると、イタリアのEUの加盟を疑問視する“EU懐疑派”は国民全体の48%にも上った。それは2010年にイタリア国民の73%がEUを支持していた数字とは劇的に異なる。

 イタリアにおける反EU勢力は、極右の「北部同盟」を筆頭に抗議政党と呼ばれる「五つ星運動」、さらに「イタリアの同胞・国民同盟」などを含めた野党勢力である。それが議会全体に占める割合は、ちょうど47%。従って48%という数字は極めてリアリティーがあるのだ。北部同盟は、英国の離脱が決まると同時に「イギリスに続け」と宣言した。

 イタリア第2の政治勢力である「五つ星運動」は、現在のところ過激な反EUの動きは見せていない。しかし2009年の結党以来、常にEU不要論を主張してきた同党は、状況によっては過激な反EU運動に走る可能性がある。そんなイタリアの状況を見るまでもなく、EUは今まさに結束か分裂かの瀬戸際に立たされている。
(仲宗根雅則、TVディレクター)