中教審指導案 「現場体制強化を」 県内、期待と懸念交錯


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 小学校高学年での英語教科化や高校の公民への「公共」の新設・必修化などを盛り込んだ中教審が示した次期学習指導要領のまとめ案について、県内の関係者からは「教育内容に実効性を持たせるためには研修できる環境や人員配置が不可欠」と指摘が上がった。

 小学校での英語はすでに「外国語活動」として始まっている。琉球大教育学部の大城賢教授(英語教育)は「小学生の英語力は伸びてきており、教科化されればさらに伸びるだろう」と期待する。同時に「教員が力を付けなければいい教育はできない。ただでさえ忙しい教員が研修を受けられるよう、体制を整えるべきだ」と県に強く求めた。

 沖教組那覇支部の大底和智書記長は「ほとんどの小学校教員には授業できるだけの英語力はない。語学学校に通うくらい継続的な研修が必要だ」と指摘。県内教員の精神疾患や病休者の多さに触れて「やることを増やすなら教職員定数も増やさなければ、ますます多忙化して倒れる人を増やすだけだ」と警鐘を鳴らした。

 高校では、選挙権年齢の引き下げを受けて主権者教育などを行う「公共」が新設される。沖縄国際大の照屋寛之教授は「7月の参院選に向けて学校は主権者教育に熱心に取り組み、投票率は予想以上に高くなった。今後も続ける必要があり、学校の役割は大きい」と評価しつつ、「主権者教育は生徒が自由に主体的に学んでこそ意味がある。学校が生徒をチェックするようなことをしてはならない」と釘を刺した。

 県高教組の福元勇司執行委員長は、新設される「歴史総合」に関し「近現代の歴史を学ぶことには意味があるが、そこに至る経緯や時代背景を丁寧に学ぶことが必要だ」と指摘。高校歴史教科書を巡り「集団自決」(強制集団死)の「強制」の記述が復活されない現状も踏まえ、「政府に都合のいい教科書になるのであれば、今後の判断を誤る近現代史学習になる懸念もある」と述べ、今後の動向を注視する考えを示した。