法の理念と乖離 安倍政権の沖縄予算減額方針


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 菅義偉官房長官が沖縄の米軍基地と沖縄振興政策の「リンク論」を認め、従来の政府方針を撤回したのは、沖縄関連予算の大幅な減額や、沖縄関連の税制優遇制度延長を厳格に判断することを見通しているからだ。基地と振興を切り離すとしてきた従来の政府方針を撤回し、完全に沖縄を組み敷く姿勢を明確に打ち出した。県に対する再提訴に加え、東村高江周辺のヘリパッド新設強行、名護市辺野古陸上部の工事再開と三正面攻勢の姿勢を見せる政府だが、さらに基地と振興のリンク論で追い打ちをかける格好だ。

 関係者によると、前沖縄担当相の島尻安伊子氏が落選したことで、政府・与党内に「これ以上沖縄を優遇する必要はない」との意見が強まり始めている。本年度の予算は3350億円だが、政府内には「300億円の上積みはいらない」(自民党関係者)との声があり、那覇空港滑走路増設の工事費を含めて3千億円台をわずかに超えればよいとの見方もある。振興策を切り詰めることで、県内での翁長雄志知事の求心力を弱める狙いがある。

 8月末に次年度の概算要求を控え、5日には米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題を巡り、国が提起した不作為の違法確認訴訟の第1回口頭弁論が開かれる。それを前にリンク論を認めて、知事に“脅し”をかけることで、県との折衝で優位に立ちたい思惑も透けて見える。

 一方で菅氏は、沖縄振興計画に明記された沖縄の「社会的事情」に跡地利用や基地負担軽減も含まれているとして、リンク論の理屈付けを図った。だが、振興計画の根拠法となる沖縄振興特別措置法は法律の目的として、沖縄の特殊な事情に鑑みるとともに「沖縄の自主性」を尊重することも理念化されている。

 鶴保庸介沖縄担当相は4日の会見で、基地に対する翁長知事の姿勢が振興策に影響を与えるかを問われ「基地の問題に対する態度をリンクさせようとする情勢を私はつくりたくない」と否定した。だが、菅氏らが振興を盾に米軍基地に反対する翁長知事の姿勢に揺さぶりをかけていることは事実であり、その姿は沖縄振興特別措置法の理念とは大きく懸け離れたものだと言わざるを得ない。(池田哲平)