【島人の目】一期一会


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 「一期一会」を辞典で調べてみると、「一生一度の機会」とある。ロサンゼルス日本国総領事の堀之内秀久氏が2年間の任務を終えて退任した。

 7月12日ロサンゼルスのハンコックパークにある閑静な総領事公邸に、南カリフォルニアで日本や日系人のために貢献している人たち約200人を招待して送別会が開かれ、私たち夫婦も参加した。

 多くの団体から総領事に対して感謝の言葉と記念品の贈呈があった。中でも特筆すべきはLAロサンゼルスドジャース球団からのドジャース選手のシャツが総領事に贈呈されたことだ。「LA DOGERS 16」バックには「HORINOUCHI 16」と印刷されたシャツが手渡された。

 背番号16というのは、かつて同球団で活躍した野茂秀雄投手の持ち番号だ。もう一つのギフトはベースボールで現在活躍中の前田健太投手のサインが入っている。いわゆる日本出身のドジャース球団現・元プレーヤーで現在滞米中の選手らの肩入れがあったのである。日米協会のダグラス・アーバー会長が采配を振るった。

 堀之内氏は鹿児島県出身で東大卒後、北京大学、ハーバード大学院を修了して外務省に入り、中国全権大使を務めた後、ロサンゼルス総領事勤務に就いた。オランダ出身のサビーン夫人をとても愛していて、どこでも夫人同伴で参加する。他人に親切で物腰の柔らかい方であったとの印象が深い。

 私もおよそ20回以上にわたり琉球新報に書いた私の記事の感想文をいただいた。なぜか知らないが、いつの間にか私と総領事は頻繁にメールの交換をするようになった。

 菊地梨沙秘書役は「総領事はごく限られた人にだけ個人でメールをしていました」と私に話したことがある。私が「総領事とお別れしなければならない時がやってまいりました。寂しいです」と話すと、総領事は小柄の私に背の高い体をかがめて、「ありがとうございました」と涙を流していたことが忘れられない。「一期一会」、総領事との名残惜しい時間をしみじみと味わったひとときであった。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)