プロボクシングの東洋太平洋(OPBF)スーパーフライ級タイトルマッチを含む全9試合が21日、県立武道館で行われた。同級王者のレネ・ダッケル(フィリピン・24戦17勝〈6KO〉6敗1分)に挑戦した同級1位の翁長吾央(大橋・31戦27勝〈18KO〉2敗2分)は、8回にダウンを奪われ、3―0で判定負けした。2014年日本新人王準優勝の荻堂盛太(平仲)はWBO世界ミニマム級9位のジェフリー・ガレロに3―0で判定勝ちした。東洋太平洋スーパーフェザー級4位の小谷将寿(琉球)も同級13位のネイサン・ボルシオに判定勝ちした。
◆優勢一転、一撃くらう/「あのダウンさえ…」悔い
練習で積み上げた自信も、有利な試合展開も、一つのパンチで無にされる。ボクシングの非情さを突き付けられた試合だった。
右のジャブと素早い出入りで王者レネ・ダッケルの大振りのパンチを見極めていた翁長吾央。誰が見ても優勢に進んだ8回、翁長のカウンターによるダメージが蓄積したダッケルの足が止まった。会場の熱い声援と期待に押されてワンツーを決めた翁長が畳み掛けようとした瞬間、ダッケルの強烈な右フックが翁長の左側頭部を打ち抜いた。
「ボクシング人生であんなに効いたダウンは初めて。それが、あんな場面で、倒されるなんて」。敗北など思いもよらなかったはずが9回以後、ダウンの影響で左腕の力が抜けた翁長は巻き返せなかった。
勝負を決めた一撃は、ダッケルからすれば、序盤から翁長のコンビネーションを防いできた右の一閃(いっせん)であり、8回に「待っていたチャンスが来た」と繰り出した会心の一撃だった。
試合後、気丈に振る舞う翁長だが「これで終わりかと思うと情けなくなる」と目を潤ませ、「あのダウンさえなければ」と繰り返した。
翁長にとって、恩師や指導者、仲間など多くの支援を受け「自分1人の試合じゃない」と、36歳で臨んだタイトルマッチだった。記者会見で、中盤までの内容の良さを質問されても「勝たないと駄目なんで」とだけ答え、「もう少し右を警戒していれば」と静かにつぶやいた。(嘉陽拓也)
◆「いい試合した」「惜しい試合」/ねぎらう恩師、会長
ダウンを奪われ判定負けを喫した翁長吾央。翁長がボクシングを始めるキッカケとなった沖縄尚学時代の監督である金城真吉氏は「一発食らってしまったのが響いたが、勝負とはそういうものだ」と語り、「最後まで分からないいい試合をしていた。よくやったと褒めてあげたい」と翁長をたたえる。終了までリングサイドから声を掛け続け、「最後の頑張りを応援していた。お疲れさんと言いたい」とねぎらった。
所属する大橋ジムの大橋秀行会長は「惜しい試合だった。ダウンを取られなければ勝てる試合だった」と振り返る。「一発の怖さを思い知った。翁長も最後まで力を振り絞って闘った。悔いはない」と話した。
セコンドについた沖縄ワールドリングの中真茂会長は8回のダウンを「相手が振り回したパンチが当たってしまった」と悔やんだ。巻き返しを図るも「8回まで精密機械のように動いていたがあのダウンでぶれてしまった。残念だ」と語った。