「県紙偏向」主張は差別 安田浩一さん、根底の“思い込み”指摘


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「思い込みによってつくられた『沖縄』への差別だ」と、県内2紙への偏向批判を分析する安田浩一さん=4日、ジュンク堂書店那覇店

 新刊「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか」(朝日新聞出版)の出版記念講演会が4日、那覇市のジュンク堂書店那覇店で開かれ、約70人が著者の安田浩一さん(51)の話に耳を傾けた。「琉球新報と沖縄タイムスの二つの新聞は偏向している」という主張について「思い込みによる差別で、それを許す日本社会が一部にある。それが許せなかった」と、出版に至った経緯を説明した。

 安田さんは、県内2紙が「基地問題ばかり取り上げる」「共産党に支配されている」など、インターネット上などで批判されている現状に触れ、「沖縄を知った気になっている人が思い込みで『沖縄』を記号化し、県内にも多様な考え方があるという部分が全く抜け落ちたまま『沖縄』という記号に対して憎悪を向けている」と指摘した。

 講演後、参加者から「右翼的な考えが一般市民にも通りやすくなっていると感じるが、その背景は何か」と問われた安田さんは、「インターネットで過激な言説があふれることによって差別のハードルが下がり、自由に罵詈(ばり)雑言を飛ばせる社会をつくってしまった」と答えた。