南米で輝く“島人の宝” ブラジル県系3世タレントのタマシロさん


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日本の沖縄ショップで買ったシャツを着て笑顔を見せるユウジ・タマシロさん(右)と妹のユミさん=8日、サンパウロの自宅(ユウジ・タマシロさん提供)

 ブラジルのテレビ番組や舞台で活躍する県系3世のタレント、ユウジ・タマシロさん(24)が、コンサートで「島人ぬ宝」のブラジルバージョンを披露している。祝い事で盛り上がる沖縄の血が成功につながったと考えており「沖縄を誇りに思っている」と話す。異国で文化をつなぐ大切さを肌身で感じているため、日本に出稼ぎで働く日系ブラジル人に対し、言葉や文化を大切にするようメッセージも送っている。

 タマシロさんはサントス市出身で、1~5歳は日本で生活していた。5歳のころ、母親にギターを買ってもらったことがきっかけで音楽とダンスに目覚めた。発表会などで歌と踊りを披露したのがテレビ番組プロデューサーの目に留まり、歌謡番組に出場。9歳でタレント活動を始めた。

 歌手、ダンサーとしての活動で10代で人気が上昇し、テレビ番組の司会も務めた。現在もブラジル各地でコンサートを開いているほか、ミュージカルにも出演している。

 ブラジルで行われた県系人の披露宴で「島人ぬ宝」を知り、コンサートで披露するようになった。動画サイト「ユーチューブ」で歌を公開しており、再生回数は約7万回に達している。「歌を知らない人でも盛り上がることができるのが『島人ぬ宝』の素晴らしさ。特に出だしの歌詞が気に入っている」という。

 妹のユミさん(21)も、尊敬する兄のインタビューなどを動画サイトで配信し、人気を得ている。「兄の考えは素晴らしいと思う。普段は見られない人気者の姿を、多くの人に知ってもらいたい」と話した。

 ユウジさんの曽祖父タマシロ・セイエイさんは沖縄で三線や踊りを教えていた人物。祖父の兄、タマシロ・セイケンさん(92)は三線づくりの職人で、度々沖縄を訪問して三線を弾いていたという。

 「日本人は『お堅い』というイメージを持たれているが、テレビに出ることでそれを覆すことができた。明るく歌って踊れたのは、沖縄のおかげだと思っている。自分が沖縄の一部であることを誇りに思っている」と強調する。

 今後は、日本で働く日系ブラジル人の学校で講演する計画を立てている。「日本の日系ブラジル人にはポルトガル語を話すことを恥ずかしく思う人もいる。母国の文化を忘れてはいけない。沖縄が教えてくれたことを出稼ぎで働く人にも伝えたい」と熱く語った。
(稲福政俊)