【島人の目】イタリアの2大問題


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 イタリアは美しく住みやすい良い国だが、あらゆる良い国々と同様にまた多くの問題も抱えている。最近の大問題の一つは地震とその対策。

 この国は日本と同じ地震大国である。先月もマグニチュード6・2の地震が発生して300人近くの死者が出た。2009年にもほぼ同じ地域で死者309人が出る地震があった。その時の苦い体験を基にイタリアの建物の耐震基準は厳しくなったはずだが、今回の地震でも新しく建てられた建物が多く倒壊して人的被害が広がった。

 そのうちのおよそ120軒ではセメントよりも砂が多い建築素材が使われたとして検察の捜査が始まっている。それ以外にも工費節約を目的にさまざまな耐震偽装工作が行われているとみられる。地震被害の多い先進国のイタリアで、そうした不正メンタリティーがはびこるのは許し難いことである。

 イタリアのもう一つの大きな悩みは、下手をすると名産品のオリーブ油が消滅しかねない問題。イタリア最大のオリーブ油の生産地、南部のプーリア州で、ピアス病菌によって引き起こされる感染症が蔓延(まんえん)し、オリーブの木が枯れる現象が進行中なのだ。

 菌の退治法は今のところ見つかっておらず、感染した木は根元から切り倒したり感染箇所を切り捨てるなどの方法しかない。これまでにおよそ100万本が感染した。

 オリーブは何百年にもわたって生きる生命力の強い木。樹齢千年を超えるものもある。僕は以前、プーリア州でオリーブを話の中心に据えたNHKの紀行番組を作った経験がある。ロケで最も感動したのは何世紀もの樹齢を誇るオリーブの大木や古木のたたずまいだった。そうした木々も多くが立ち枯れしたり伐採されて焼却されるなどしている。一刻も早い解決策が待たれる。
 (仲宗根雅則 イタリア在、TVディレクター)