住宅ローンなど融資60億、6割余が地元行などから借り換え 鹿児島銀の沖縄進出1年


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
鹿児島銀行沖縄支店。戦後初となる沖縄県外からの地銀進出から1年が経過した=那覇市

 戦後初となる県外地方銀行の沖縄進出となった鹿児島銀行(上村基宏頭取)の沖縄支店開設から、28日で1年が経過した。同支店によると8月末までに住宅ローンを中心に個人融資は件数で約230件、総額で60億円余を実行。沖縄の地元地銀との金利差から相談が相次ぎ、融資の6~7割が他行からの借り換えだった。金利引き下げ圧力を受けた県内地銀が防衛戦を強いられるなど金融環境に波紋を広げた一方、沖縄を経由して南九州の農産物をアジアに輸出する地域振興の実践は模索が続いている。

 同沖縄支店によると、開所以来、8月末までに2500件を超える融資相談があった。1月から始まった法人営業では住宅建設や不動産業など約20件、10億円の融資を実行したという。預金口座の開設数も千件を超えた。

 鹿児島銀行の沖縄支店は昨年9月28日に那覇市銘苅に開店。那覇空港が国際貨物輸送の中継地点になっている利点を生かし、沖縄に進出している取引先企業の輸出業務を支援するなど地域の情報収集を担う沖縄事務所も併設した。

 開店当初の14人体制から現在は18人まで行員を増員。今年1月には法人営業担当を配置し、当初の計画を前倒しして事業性資金の対応を始めた。

 井上博昭支店長は、住宅ローンを中心に金融業務については「おおむね順調」と総括するのに対し、沖縄を経由した海外展開の支援については「鹿児島、宮崎の農水産物をアジアに展開したいが、なかなか販路がない。安定した量を確保する課題もあるが、情報が乏しい」と現状を語る。

 沖縄支店では開設1周年記念として、鹿児島の老舗百貨店・山形屋のバイヤーと県内企業12社をマッチングする「山形屋商談会IN沖縄」を8月に那覇市内で開催。今月1、2日には東京で開かれた食の大商談会(企画運営・新日本スーパーマーケット協会)に沖縄ブースを出店した。井上支店長は「アジアに展開するきっかけづくりとして、沖縄の企業を九州とつなぎ、その中で情報を蓄積していきたい」と語った。