先住民族の権利保護 国連勧告に国が反論 石垣・豊見城の意見書引用


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 国連の人種差別撤廃委員会が2014年に、沖縄の人々を先住民族として権利を保護するよう勧告したことを受け、日本政府が今年8月、勧告の撤廃を求める豊見城、石垣両市議会の意見書を根拠に反論したことが分かった。沖縄における表現の自由の侵害を訴える追加報告書を国連機関に提出した反差別国際運動(IMADR)と沖縄国際人権法研究会は、政府に対し「自分たちに都合のいいところだけ引用している」などと批判している。

 沖縄における人種差別撤廃委員会の勧告は日本政府に報告書提出を義務付けていないが、政府はほかの勧告の反応とともに、8月18日に国連人権高等弁務官事務所に提出した。外務省人権人道課は2市議会の意見書可決を踏まえ、「事実関係として進展があるから(報告を)出す判断になった。沖縄にもいろいろな意見がある」と説明した。

 報告書は「『先住民族』と認識している人々はアイヌの人々以外には存在しない」という見解を示しつつ、豊見城市議会の「県民のほとんどが先住民族であるとの自己認識を持っておらず」(15年12月)、石垣市議会の「先住民族との指摘は当たらない」(16年6月)の文言を引用。「県出身者が『先住民族』であるとの認識が日本国内に広く存在するとは言えない」とし、「権利を全て等しく保障されている」と強調した。

 沖縄国際人権法研究会の島袋純琉球大教授は「先住民族かどうかの概念でなく、どれだけ沖縄の人権が侵害されているかが大きい」と指摘した上で、「国連が定めてきた先住民族の定義を押さえないと反論にならない」と批判。反差別国際運動の小松泰介氏は「国連の舞台で話題になり、くぎを刺そうとしたのではないか」と推測した。

 反差別国際運動などは9月27日、名護市辺野古や東村高江周辺の基地建設などにおける表現の自由に関する追加報告書を、国連のデービッド・ケイ特別報告者や関係機関にも送付した。