ムース食いかが 高齢者らに「食べる喜び」 工夫重ね20種、宅配も


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飲み込みが難しい人にも食べやすいムース食の宅配を始めた「まじゅん」の宮里園子オーナー(左)と護佐丸さん夫妻=浦添市仲間

 高齢や病気でかみ砕くことや飲み込むことが困難な人に食べる喜びを味わってほしいと、宅配専門のスープのお店「まじゅん」(浦添市仲間)が10月からムース食の宅配を始めている。ムース食は普通食と見た目は大きく変わらず食材が固形だが、口に入れると溶けて飲み込みやすい。食材の彩りや形を楽しめる利点もあるという。店を営んでいるのは宮里園子さんと護佐丸さん夫妻。料理が大好きというオーナーの園子さんは「全ての人に食べる喜びを提供したい」と意欲を見せる。(高江洲洋子)

 かんだり飲んだりすることが難しい人向けには通常、調理した食べ物をミキサーにかけて柔らかくする「ミキサー食」や、食べ物を切り刻む「刻み食」などがある。園子さんはミキサー食作りも試してみたが、普通食に比べると見た目も味も劣った。約9カ月間、試行錯誤を重ね、ムース食にたどり付いた。

高齢や病気などで飲み込みが難しい人向けに作ったムース食。献立は「鶏肉と野菜のカレー風味」と枝豆のスープ

 ムース食は食材を全てゆでた後、それぞれをミキサーにかけてペースト状にし、自然由来の添加剤を混ぜて形を整える。「鶏肉と野菜のカレー風味」なら、鶏肉のソテーにブロッコリーとカボチャの煮物を添えている。口の中に入れるととろりと溶け、鶏肉のうまみや、カボチャの甘みなどがしっかり味わえる。

 主食は、全がゆよりも水分が少なめで、飲み込みしやすい「あちびー(柔らかめに炊いたご飯)」を提供する。主食に主菜、スープ、デザートがセットになった献立は約20種類、1食600円で自宅に届ける。宅配エリアは浦添市中心だが、隣接する市町なら相談に応じる。有料老人ホームなど福祉施設でも施設側の許可があれば宅配する。

 夫の護佐丸さんは以前、障がい者の通所施設で働いていた。護佐丸さんには知的障がいとてんかんのある妹がいる。「ムース食があれば、妹が高齢者になっても食事がおいしく食べられるはず」と話す。宮里夫妻は「まじゅん」の運営が軌道に乗れば、障がいのある人たちが働く場にしたいという夢も描いている。

 「まじゅん」の問い合わせは(電話)098(953)0065。