着陸帯工事で県道通行制限 「座り込み危険」→実態は搬入車増 県警の説明矛盾


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 東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場の新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の工事現場付近で、警察が一般車両の通行を長時間制限している。7日、平和学習のため沖縄を訪れた観光バスも足止めされた。これまで抗議行動に参加したことのある人は、仕事や私用で県道70号を通ろうとしてもダンプカーの搬入が終わるまで通行は認められない。地元住民からは「観光に悪影響だ」との声の他、通行できる車両を選ぶ警察の行為について「恣意(しい)的で、不条理だ」との声も上がる。

メインゲートとN1地区ゲート前を往復して砂利を搬入するダンプカー。この日は96台分が搬入された=10日、東村高江

 「もう沖縄に来ないでおこうか」。3日、県道70号を自転車で走行していた県外からの夫婦は困惑した表情を浮かべた。12~13日に開かれる自転車の祭典「ツール・ド・おきなわ」を前に、やんばるのコースを下見していた時だった。ダンプカーの搬入時、県道70号の通行を制限された。「辺戸岬に行きたいだけなのに…」。バイクを運転していた男性は、メインゲート前で車両が立ち往生している様子を見て引き返した。

 平和学習の観光バスも7日、35分にわたって足止めされた。県警は「大型バスの通行は物理的に困難だった」と答えたが、バスでガイドを務めた川満彰さんは「うそだ。大型のダンプカーや他の車両は通って行った」と指摘した。県内では71年前の悲惨な沖縄戦から現在に続く基地問題を学ぼうとするツアーや修学旅行は多い。各地で平和ガイドを務める川満さんは「われわれは座り込みではなく学習のために現場を訪れた。沖縄の歴史や現状を学びに来る人を通さないのは不条理ではないか」と憤った。

 県警は、ダンプカーの搬入時に県道70号を通行させる車両を選んでいる。「危険かつ違法な抗議行動を行うという蓋然(がいぜん)性が高いこともあり、これまで(抗議)行為を行った車と行うであろう車は止めないといけない」と“予防措置”であることを強調する。報道機関に対し「刻一刻と変化する現場に対応して、各種法令に基づき必要な措置を講じている」と回答するが、足止めされた一般車両の運転手に対しては明確な法的根拠を示していない。

 県警は一般車両の通行を制限したことについて「N1ゲート付近で抗議参加者が座り込み、通行が困難な状況があった。危険かつ違法な状態を解消するまで車両を一時止め置いてもらって、交通の回復を待ってもらっていた」としている。だが、ダンプカーが搬入される際、N1地区ゲート前は機動隊によって県道に座り込む行為を阻止されており、説明に矛盾が生じている。機動隊が警備している間、ダンプカーは支障なくメインゲートとN1地区ゲートを何度も往復しており、抗議行動ではなく、搬入に時間がかかることが一般車両が止められる主な原因だ。

 ダンプカーの搬入回数が増えていることで、車両が止められる時間も長くなっている。着工当初、12台のダンプカーの搬入は30分程度で終わっていた。約70台が搬入された日、搬入に要する時間は3時間にわたり、抗議行動に一度も参加したことのない人でも、30~40分待たされた。ヘリパッド工事に反対する60代の男性は「一気に砂利を搬入しようとするから時間がかかるんだろう。台数を減らすとか単純なことができないのか」と不満げに言った。

 一般県民や観光客よりも、新たな米軍施設建設のための工事車両の通行が優先される状況が続いている。(阪口彩子)