シカ“落とし穴”発見 渡嘉敷島・昭和初期の捕獲用


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 【渡嘉敷】渡嘉敷村阿波連の金城園芸代表の金城淳夫さん(62)が4日、村阿波連見花原の山林(標高約150メートル)で造林作業のために竹や雑木などを伐採中に、昭和初期に掘られたとみられるケラマジカ(シカ科)捕獲用の落とし穴を同じ場所から四つ発見した。穴のすぐそばから当時、穴を掘ったと思われるクワの歯も見つけた。

 金城さんは「シカ捕獲用の落とし穴跡は島の山中の所々で見掛けるが、1カ所から四つの穴を発見したのは今回が初めてだ。ほとんどが半分ぐらいは土や雑草で埋まり1メートルぐらいの深さだが、今回のは昔のままの原型をとどめており、深さ約2メートル、直径約1メートルもあるので驚いた」と話した。

 ケラマジカは1628~44年に薩摩(鹿児島県)から持ち込まれ、慶良間諸島の久場島に放したとされ、以後、慶良間全島で繁殖し分布するようになった。昭和初期までは、渡嘉敷島にも相当数が生息していた。

 農作物を荒らすという理由で落とし穴を掘って捕獲していたが、効率が悪いので猟犬2頭を導入して鹿狩りを行い、完全絶滅させた。

 1972年、国指定天然記念物に指定され、保護策が講じられた。そのため、数多く繁殖して座間味村から泳いで渡嘉敷島に渡るようになり、75年ごろから渡嘉敷島でもたびたび目撃されるようになっている。
(米田英明通信員)

昭和初期ごろにシカ捕獲のために掘った落とし穴と、当時のクワの歯を発見した金城淳夫さん=10日、渡嘉敷村・阿波連見花原の山林
1カ所でまとまって発見されたケラマジカの捕獲用落とし穴