長生炭鉱水没事故の遺骨収集を 県出身犠牲者5人の情報捜す 歴史に刻む会


この記事を書いた人 金城 美智子
具志堅隆松代表

 1942年に長生炭鉱(山口県宇部市)で発生した水没事故の犠牲者183人の遺骨収集を進めるため、「長生炭鉱の『水非常』を歴史に刻む会」が沖縄県出身の犠牲者5人の遺族を捜している。同会の内岡貞雄共同代表と、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表が28日、県庁で会見し、情報提供を求めた。

 水没事故で亡くなった県出身は新垣加那さん(46)=那覇市首里赤平町、新垣永光さん(40)=名護市安部、大城惣助さん(41)=名護市呉我、島袋貞光さん(52)=名護市源河、仲松三良さん(44)=越来村宇久田の5人(住所、年齢はいずれも当時)。殉職産業人名簿(大日本産業報国会)などで判明しており、2013年に建立された犠牲者追悼碑に刻銘されている。

 長生炭鉱は約2千メートルの海底炭鉱。事故で陸の坑口から約千メートル付近で坑道が崩落し、千メートルより奥にいた183人が犠牲となった。犠牲者のうち136人は朝鮮人で、日本人は47人だった。日本人の犠牲者は山口県の18人が最も多く、沖縄県出身者は2番目に多かった。同炭鉱は、海底下40メートル未満は採掘できないといする当時の炭鉱法に違反し、浅い場所で採掘していたという。

 事故から74年たっているが、遺骨は炭鉱に残されたままとなっている。遺骨の引き上げには数億円かかると見込まれており、「長生炭鉱の『水非常』を歴史に刻む会」は年明けにも厚生労働省に協力要請する考えだ。

 内岡共同代表は「まずは事故を知ってもらいたい。できれば遺族と一緒に取り組みを進めたい」と語った。

 ガマフヤーの具志堅代表は「戦争に向かうための石炭増産が奨励され、働く人は産業戦士と呼ばれた。国策の犠牲者だ。国の責任を考えないといけない」と説明した。

 内岡共同代表は30日まで県内に滞在し、名簿に記された遺族の住所を訪問する予定。問い合わせは内岡共同代表☎090(9579)1588。
【琉球新報電子版】