食べる幸せ提供 飲み込みやすい献立に 安謝特養ホーム


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
見た目は普通食だが、柔らかい「凍結含浸法」を活用した献立を味わう利用者ら=11月14日、那覇市安謝の安謝特別養護老人ホーム

 見た目は普通食と変わらないが、口に入れると柔らかく飲み込みやすい。安謝特別養護老人ホームが昨年4月から、かんだり飲み下したりすることが難しくなった利用者向けに、特殊な調理法「凍結含浸(がんしん)法」を活用した献立を定期的に提供している。献立は魚の西京(さいきょう)焼きやハンバーグ、ブロッコリーなど。栄養士が「食べる幸せを味わってほしい」と3年前から試作品づくりと試食会を重ね、提供にたどり着いた。

 高齢者の福祉施設は通常、飲み下しが困難になった利用者に対して、主菜や副菜を刻む「刻み食」やミキサーで混ぜる「ミキサー食」を提供しているが、普通食に比べると見た目や味が劣ってしまう点が課題だった。含浸法は酵素と真空技術を用いる点が特徴で、見た目は固形だが、触ると柔らかい。

「凍結含浸法」を活用して作ったサンマの塩焼き(右)や、白身魚のポテサラ焼き

 「介護を考える女性の会」代表の堀川美智子代表によると、県内で含浸法を活用した献立の提供は同ホームが唯一。「見た目が普通食と変わらないから食べる楽しみが味わえる。誤嚥(ごえん)を招きやすい刻み食に比べると、安心して食べられる」と評価する。

 含浸法の調理法は、肉や魚、野菜を切った後に、酵素の入っただし汁と一緒にそれぞれ真空パックにし、約24~28時間冷蔵する。その後、蒸し器で熱を加えて仕上げる。

 扱う食材の種類や切り方によって柔らかさが異なるため、同ホームは試作づくりを重ね、試食した職員の声を反映させながら完成品に近づけていった。同ホーム栄養士の山里律子さんは「食事は彩りも大切。高齢者の方々にいつも喜んで食べてほしかった」と話す。

 同ホームは主におかずに含浸法を活用した献立を導入し、利用者65人の食事に提供している。焼いた白身魚にマッシュポテトを添えた「白身魚のポテサラ焼き」を食べた85歳の女性は「食事が楽しい。ほとんど残さず食べているよ。次の献立は何が出るかと、楽しみに待っている」と笑顔を見せた。別の88歳の女性は「味がとてもいいね」と話していた。(高江洲洋子)