【沖縄北部・米軍密輸対応訓練】 米都合の機能強化 


この記事を書いた人 金城 美智子
東村高江の北部訓練場で2006年に行われた米海兵隊の「ジャングル訓練」。切り立った崖からロープを使い降下する兵士

■解説
 米軍北部訓練場が、米国内の「麻薬戦争」に対する訓練拠点として位置付けられていることが明らかになった。米国の日本防衛義務と日本の施設提供義務を定めた日米安保条約の範囲を超えた運用といえる。北部訓練場は、フェンスと深い森に包まれ県民から中身が見えないブラックボックスの中で、本来はなかった機能が強化されている。

 米国では、メキシコやコロンビアなど中南米からコカインやヘロインなどの米国への流入が長年の社会問題になっている。麻薬対策としてコロンビアでのテロ掃討作戦に米軍を投入したこともあった。次期米大統領のトランプ氏にとっても懸案事項となっている。

 日米安保条約は第6条で、日本の安全と極東地域の平和と安全の維持に寄与するため、米軍は日本国内の施設・区域を使用することを許されると定めている。そこに中南米や米国内の「平和と安全の維持」は含まれていない。米国内の麻薬戦争への対策として日本の施設を使うのは目的外使用だ。

 米軍は常々、北部訓練場をジャングル訓練ができる米国外唯一の訓練場とアピールしてきた。だが米国内にもジャングル訓練場はある。ベトナム戦争時にはベトナムのジャングル戦闘のための訓練と意義を強調した。ジャングル地上戦の戦場がなくなれば、対象を中南米へと拡大させる。

 日米地位協定は、提供施設は「協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも日本国に返還しなければならない」と定めている。「必要でなくなった」としないために、施設を維持するのに無理やり理由を探しているようにさえ見える。沖縄の施設は米国内の治安維持のためのものではない。もう返還しかない。(滝本匠)