米本土では住民抗議で工事中止 陸軍管理地の送油管建設、沖縄と“二重基準” 「水源、環境に配慮」


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 【ワシントン=問山栄恵本紙特派員】米国防総省傘下の陸軍省は4日、米中西部ノースダコタ州などで民間企業が進めている「ダコタ・アクセス・パイプライン」の建設を巡り、陸軍省が同州などで管理する区域での工事を許可しないと発表した。石油漏出による水源汚染や環境破壊を懸念してネイティブ・アメリカン(先住民)が建設中止を求めていた。オバマ政権は国内の先住民らの主張に配慮する一方、同じく自然環境への悪影響が指摘される沖縄の辺野古新基地建設や北部訓練場の新ヘリパッド建設では、県民の反対にかかわらず工事推進の立場を堅持している。“二重基準”が浮き彫りになった格好だ。

 ノースダコタ州のミズーリ川とダム湖のオアヒ湖の下を通るパイプライン建設に反対しているのは、建設予定地の近くに居留地を持つスタンディングロック・スー族。「水資源を脅かされる」「先祖ゆかりの聖地や遺跡が破壊されている」などと主張し、全米から集まった賛同者や各地の先住民らと共にキャンプを張り、抗議活動を続けてきた。

 工事予定地は米陸軍工兵司令部が管理しており、着工には陸軍省の許可が必要となる。スタンディングロック・スー族は米連邦裁判所に建設計画中止を求めたが、訴えは却下されていた。

 だが、オバマ政権は判決後、検討が必要としてオアヒ湖付近の連邦政府所有地での工事を全て停止。陸軍省はスー族や、パイプラインの建設会社との協議を経て、工事を許可しないことを最終的に決定した。ジョー・エレン・ダーシー米陸軍次官補は声明で「責任を持って工事を完了させる最良の方法はパイプラインのルートを変更することだ」と強調した。

 米主要メディアは数カ月にわたり座り込みなどで抗議してきた先住民らの「大きな勝利」(ニューヨークタイムズ)と報じた。

 パイプライン建設を巡っては建設に反対するスタンディングロック・スー族と、建設会社2社の作業員や警備員が激しく対立。フランスのAFP通信などによると、建設会社側が反対派を催涙スプレーや犬で強制排除したため、負傷する人もいたとした。抗議の様子は世界中の注目を集めるとともに、強制排除の方法が問題になっていた。

 ただ、トランプ次期大統領は建設を推進する方針を明言しているため、今回の決定が覆される可能性も指摘されている。