カジノ法案衆院通過 過去には基地跡地に導入議論も 知事反対で下火に


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 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案が6日の衆院本会議で可決されたことに対し、沖縄県内の経済関係者からは「議論は再燃するかもしれないが、知事が反対している以上、導入は無理」と県民の合意形成は遠のいている状況との見方が広がる。県内経済界では2000年代から調査・検討を進めてきたが、カジノ導入反対を公約にした翁長県政の発足に伴って推進の機運は弱まり、議論は下火になっている。

 県内主要経済団体で構成する県経済団体会議は2001年、カジノ導入のための法制新設などの要望を関係閣僚に提出し、県民の間に賛否がある中で波紋を広げた。

 世界の事例調査や法制度研究などの実務を担ったのが沖縄経済同友会だった。同友会が06年に発表した「沖縄経済21世紀ビジョン」では、2030年までの道州制移行を前提に、米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)跡地をカジノなどが立地する「観光リゾート地域」にするとの構想が盛り込まれた。

 当時、同友会事務局長としてビジョン策定に携わった又吉章元氏(那覇商工会議所参事)は「一流のホテルやエンターテインメントが楽しめる国際観光都市づくりに、キンザー返還地は条件がいい。実験的にエリアを区切り、シンガポールのような高度な都市機能を埋め込めると構想した」と振り返る。カジノについては「常に新しいモノを生み出す『創造都市』であるため、リニューアルに必要な収益を生み出す原動力が必要だ。それが世界のIRではカジノであり、カジノなしに一流の質の施設を整備するのは難しい」と指摘する。

 経済界出身の仲井真弘多前知事は、IR導入について調査する「IR担当」を県庁に置いた。14年に米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」の運営会社、ユー・エス・ジェイ(大阪市)が沖縄に第2のテーマパーク建設を検討していることが明らかになった際にも、沖縄でのカジノ解禁を前提とした進出との見方が付きまとった。

 一方、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の平良朝敬会長は「日本以外のアジアでは(カジノ誘客の)競争が激しくなっている。韓国や中国本土にもカジノの整備計画がある。今はカジノがあるから観光客が来る時代ではない」と観光誘客には懐疑的な見方を示す。平良会長は「カジノがあるかないかは観光に影響がない」とし、治安などの課題があることから「もしカジノが導入されれば、沖縄観光の『性格』が変わっていく」と強調した。

 法案の衆院通過について、県経済団体会議の石嶺伝一郎議長(県商工会議所連合会会長)は「現在、沖縄では統合型リゾートの導入に関する検討は行われていない。引き続き県の動向を注視していきたい」とコメント。県政交代による政策転換を受けて、慎重さを見せている。