青切りシークヮーサー鮮度維持 冷蔵保存技術を研究


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<氷温貯蔵>2015年度の実験で2カ月氷温貯蔵(3度程度)した青切りシークヮーサー。酸味が落ちない(クロックワーク提供)
<通常冷蔵>2015年度の実験で2カ月通常冷蔵(7度程度)した青切りシークヮーサー。2カ月半経つと変色し酸味が半分程度になる(クロックワーク提供)

 沖縄特産の青切りシークヮーサーの県外出荷拡大に向け、鮮度を維持したまま冷蔵保存し輸送する技術の研究開発が進んでいる。2018年度の商用化を目指している。シークヮーサーの年間生産量約3千トンのうち、青果として流通するのは県内市場を中心に5%程度にとどまる。県外出荷に向けては常温で10日程度という保存期間がネックだったが、シークヮーサーに合った保存技術が確立できれば、出荷の拡大や農家の所得向上につながりそうだ。

 果実の鮮度を保つには、果実の呼吸を緩やかにして「眠らせる」必要がある。呼吸を緩やかにするには酸素を抜いたり冷凍したりとさまざまな方法があるが、解凍後に急速に品質が劣化するなど課題があった。

 研究は15年度から始まり、県農林水産部から事業委託を受けたJAおきなわと食品検査を行うクロックワークの共同事業体が取り組んでいる。

 クロックワークなどは青森県の大青工業と連携し、リンゴの保存にも使われている「氷温貯蔵」を活用した方法を研究している。15年度の予備調査ではゆっくり冷やしていき、1~5度程度での保存が適するとの結果がまとまった。7度の普通冷蔵ではシークヮーサーの特徴である酸度が貯蔵開始後75日間で半分ほどに減るが、3度の氷温貯蔵では4分の1程度の減少に抑えられた。本年度は、より細かい温度帯などの精査を進めている。

 冬場のかんきつ類ではスダチ、へベスなどが計数万トン単位の市場規模がある。同じ香酸かんきつで酸味や香りが強い青切りシークヮーサーの青果流通が実現すれば、冬場の鍋需要や、アルコール類への香味付け需要も見込め、需要拡大への期待が高まる。

 シークヮーサーの大部分は飲料などの加工用として、現在1キロ100~150円程度で取引されている。青果はその2~3倍程度で取引されており、農家の所得向上にもつながる。

 県流通・加工推進課の幸地稔課長は「鮮度保持技術が実用化されれば、これまで出荷できなかった時期に新鮮な県産農産物を供給できるようになるなど、多くの可能性を秘めている。高品質な県産農産物を全国の消費者に届けるため、鮮度保持技術の確立に努めていきたい」と話した。