墓の概念、変えたい 喜友名さん夫妻 独自の「我が家」建てる


社会
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 【読谷】先祖と子孫の“絆”をつなぎたい-。読谷村座喜味の喜友名昇さん(77)、ヨシ子さん(72)の夫婦が11月に完成させた一族の墓が、これまでの墓の概念を覆す出来栄えとなっている。「家」のような外観の内部には、天井の丸いガラスから明るい光が差し込む。亡くなった先祖と孫たちの写真が飾られ、設置された椅子に座って、のんびりユンタクもできる。根底にあるのは「戦争の中、苦しい思いで生き抜いた大事な人が安らかに眠れる墓にしたい」との先祖を尊ぶ思いだ。

「墓の概念を変えたかった」と話す喜友名昇さん(左)とヨシ子さん=読谷村座喜味

 創業41年の老舗葬儀会社「カデナ花輪」(読谷村)の会長を務める昇さんには、積年の思いがあった。「墓の中は暗く、虫も多い。おじい、おばあがもっと安らかに眠れる墓を造りたい。何とか墓の概念を変えられないか」

 3年前に本格的な構想を始め、今年6月に着工。11月13日の落成式には親戚ら約30人が集まり、昇さんの母・カマさん(享年96)が歌う民謡の肉声の録音を聞きながら思い出を語り合った。

 墓の名前は「やすらぎの苑(その)」、コンセプトは「永久(とこしえ)の我(わ)が家」だ。建物部分は約30平方メートル。両開きの扉を開けると、正面に亡くなった両親や兄弟らの位牌(いはい)と写真が並び、その中央上に「絆」の文字が刻まれている。それぞれの位牌の裏には「親戚のつながりを忘れないように」と、出生や嫁ぎ先などを細かく記している。

 外部にも工夫を凝らす。入り口横にはカマさんがよく口にした「いちみる 孝行(生きているうちに親孝行しなさい)」「じんとぬちとや 左右(お金と命は両方大事)」などの言葉を刻み、入り口上部では「戦争のない、平和な時代が続くように」との願いを込めたハトが参拝者を出迎える。

 珍しい形状や細かい工夫を一目見ようと、県内外から訪れる人もいるという。昇さんは「明るく、子や孫が集まりやすいこういう墓の概念が広まってくれたらうれしい」と笑顔で語る。ヨシ子さんも「おじい、おばあも天国で喜んでるよ」と満足げだ。夫婦で強めた一族の絆は途切れることなく、後世に紡がれていく。(長嶺真輝)