【島人の目】波照間名誉教授の門出


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 10月29日、那覇松川の「かずさん亭」という居酒屋で、波照間永吉県立芸大名誉教授の家族との夕食会が行われた。世界のウチナーンチュ大会5年ぶりで会える喜びと教授の長年の労をねぎらい、定年退職と今後のより一層の繁栄を願った団らんのひと時だった。

 早稲田大学博士課程・アジア太平洋研究科に在学している娘の陽さん、同じく早稲田大修士課程修了の永楽さん、教授の教え子でもある県立芸大琉球芸能専攻准教授・比嘉いずみさんと、山里静香さん(同大大学院博士課程在籍)、中村知子さん(県立芸大音楽学部琉球芸能専攻室助手)らが、波照間教授の新しい旅立ちを琉球舞踊を舞ってお祝いした。

 波照間教授は1950年石垣市生まれ。琉球大学卒業。法政大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。文学博士。沖縄県立芸術大学教授・附属研究所所長を歴任。専攻は琉球文学・文化学。一般社団法人日本学基金より「2013年日本学賞」が「南島祭祀歌謡の研究」出版に貢献したとして授与された。私と教授の親交は10年以上にも及ぶ。陽さんが早大在学中にアメリカ留学し、私がお世話したのが始まりだ。教授は09年8月に行われた「北米沖縄県人会創立100周年記念式典」にて私の要請に応えてボランティアで特別講演していただいた。

 波照間教授は「『鎌倉芳太郎ノート資料集』全4巻の刊行が終ったので、鎌倉芳太郎の沖縄研究について調査を進めるほか、今後は琉球文学の主要作品である『おもろさうし』の全訳、南島歌謡の注釈研究を進めていきたいと思っている」と話した。陽さんは「博士課程修了後は帰郷し、沖縄の人々に役立つような仕事に従事したい」と抱負を語った。

 永楽さんは13年に早稲田大学大学院政治学研究科に入学、専門は公共経営、主に行政研究や自治体での政策立案について研究し、大学院の修士論文では、「名護市の財政における米軍基地関係収入が自治体経営に与える影響の考察」と題し、名護市の財政について研究したという。波照間教授の新たな門出を祝いつつ、それぞれの抱負や研究について語り合い、思い出深い一夜となった。(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)