【アメリカ】20歳で渡米し母として奮闘 那覇出身 苗子・ヴェターさん


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家族に囲まれる苗子・ヴェターさん(前列左)=ミネソタ州

 ミネソタ州在の苗子・ヴェターさんは高校生の時に米陸軍勤務の夫ローレンさん(63)との運命の出会いがあった。「母や祖母からは『2人共まだ十代、一緒になってもアメリカで捨てられるのがおちだ』と言われ猛反対された」と苗子さんは当時を思い出す。説得を続け高校卒業後に結婚式を挙げた。

 20歳で長男ウィリアムさん(42)を出産後、夫の転勤でカンサス州、ドイツに転居し長女、アンジェラさん(39)次女のリサさん(38)の3人の子宝に恵まれた。夫の故郷ノースダコタ州に移り夫は軍を退役後大学に進学しパートの仕事をしながらビジネス科を卒業した。一方、育児に奮闘しながら周りに日本人の知り合いが全くいなかった苗子さんは、育児の悩みがあっても相談する友人もいないまま、全てを一人で乗り越えてきた。「経済的に大変な上、寂しさもあって精神的に辛い日々があった。そんな時は沖縄の母と電話で話すことで慰められた」と述懐する。

 その後、ミネソタ州に引っ越し、県系人の知り合いもできた。子育ても一段落し民間の保育園で働くことになった。米国では、保育士の離職率の高い事が問題になっているが、苗子さんは勤務先の上司や同僚らと良好な関係を築き、勤続28年のベテラン先生として評価されている。

 さらに保育の現場では保育の質が子どもの発達や学習に影響を与えるとのことで保育士の質の向上を図る一つである児童発達支援士(CDA)の資格取得が義務付けられた。苗子さんは、大学のオンライン講座を履修。「仕事と家事を終えて毎晩コンピューターとにらめっこで猛勉強した。内容自体は、これまでの経験で問題なかったが、筆記の際英語の文法には苦労したがいい成績で資格取得した自分を褒めたい」と笑う。

 息子、娘2人もそれぞれに独立し家庭を持った。孫は7人。夫は国防総省の会計監査官を退任後、現在は、印刷センターの責任者として働いている。「感謝祭等で家族全員で集い、にぎやかなひとときを過ごしたり、自己啓発の本を読んだりしている時が幸せ」だとほほ笑んだ。(鈴木多美子通信員)