「はいたいコラム」 餅を売るなら餅つき体験を


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 島んちゅの皆さん、はいたい~。今年も残り少なくなってきました。お正月と言えばお餅ですね。先日、石川県白山市で餅つきをしてきました。杵(きね)の重さは5キロ近くあり、持ち上げるだけで一苦労。これを臼の中の真っ白なお餅目がけてよいしょーっ! ペッタン、よいしょー!返し手や周りの皆さんの掛け声に合わせて杵を振り下ろすのは、リズムに合わせた踊りみたいで楽しいー! 見るとやるでは大違い! 体験することの意義を感じました。

 主催したのは、地元でお米やもち米の生産・加工をする会社「六星」。この餅つきイベント、アメリカ・シリコンバレーやニューヨークでも開催しているそうです。見たこともない大きな臼と杵でリズミカルにOMOCHIをつく様子はアメリカ人にもウケるでしょうね。単にお米やお餅を店頭に並べても手に取ってもらえるか分かりませんが、「餅つき」という伝統文化とパッケージで売る方法は、人の興味と購買意欲をかき立てるだろうと思いました。

 そんな折、都内のある地区で屋外での餅つき大会が禁止になったというニュースがありました。手で餅を丸めたりする工程で菌やウイルスがつき集団食中毒が発生しやすいとして保健所が禁止したというのです。食中毒の予防、食品衛生の観点は不可欠ですが、禁止以外にも方法はあるはずです。六星さんの餅つきで体験させているのは、杵でつく工程だけで、餅を丸めたり、きな粉を付けたりするのは会社の人が手袋を付けてやっていました。衛生面には十分配慮がなされています。

 もち米は田んぼで生まれた農産物であり、お餅は何百年も昔から豊作を祝い、木製の臼と杵でついてきた日本の農林業と食文化の象徴です。

 一度でも自分で餅をついたことがある人なら、その苦労や作り手の気持ちに共感し、残すこともないでしょう。感謝と敬意を払うはずです。私なんてたった一度の餅つき体験でこれほどお餅ファンになったのです。

 餅つきが街から消えることは、餅を食べる風習、文化が日本から消えることを意味します。“見える化”は重要なのです。おコメ離れと言われる今こそ餅つきの復活を。そしてくれぐれもゆっくりかみましょうね~。みなさまよいお年とよいお餅を!

 (フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。

※次回は1月15日に掲載します。