正月のおもてなしに 琉球接待料理「東道盆」


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琉球王朝時代の宮廷料理「東道盆」。上から時計回りに、昆布巻き、からし菜入りかまぼこ、ミヌダル、ごぼう巻き、田芋のから揚げ、肉かまぼこ、中央に花いか
松本嘉代子さん

 東道盆(トゥンダーブン)」で、新年の御取持(ウトゥイムチ)(おもてなし)を。松本料理学院学院長の松本嘉代子さんは、琉球王朝時代に、来賓の接待に使われた宮廷料理「東道盆」を、沖縄の伝統的な正月料理として提案する。盆がなくても、家にある器で盛り付けると祝い肴(ざかな)になる。10日の第582回新報料理講習会で調理実演した7品から2品を紹介する。

 東道盆は来賓をもてなすための器で、酒宴に使われた。琉球漆器で作られた器の外側は丸形、四角、六角、八角と偶数で、五、七、九の奇数に区切られた中側に料理を盛る。器そのものと、盛り付けられた料理も含めて東道盆と呼ばれている。

 東道盆は、食紅と飾り包丁で鮮やかに仕上げた「花いか」を中心に配し、豚肉と魚のすり身で作る「肉かまぼこ」、魚のすり身にカラシナの絞り汁を加えた「からし菜入りかまぼこ」、豚肉を黒ごまで包んで蒸した「ミヌダル(黒肉)」などを盛り付ける。

 「昆布巻き」のコンブは慶(よろこ)び事に使われる食材で、「ごぼうの肉巻き」はゴボウが土深く植わっていることから「根付く」「安定」という意味も込められているという。「田芋のから揚げ」は、水田で親イモに子イモが成る様子から、子孫繁栄をもたらす縁起物として行事で食べられることが多い。縁起物の料理を、家族の無病息災を願って1年の初めに食すのもいい。

 松本さんは「東道盆は、縁起物の食材が入っているだけでなく、タンパク源の豚肉はビタミンB1を多く含み、食物繊維やミネラルの多いコンブ、ビタミンEなども取れるゴマなど栄養がバランス良く取れ、非常に優れた献立になっています」と話す。

 東道盆を正月料理として提案する理由の一つに、次世代に正しく琉球料理を継承したいとの思いがあるという。「その土地で取れた産物を、その土地の料理法で食すことを『土産土法』と言います。結局これが一番体に優しい。琉球料理がクスイムン(薬膳)と呼ばれるゆえんでもあります。この先も、沖縄の大事な食文化を若い世代につなげていくことが、伝統をつくることになるのだと思います」

 松本さんは、東道盆がない場合でも、陶器や漆器、ガラスなど沖縄の器に盛り付けるだけで、立派な正月料理になると提案する。見た目にも美しい東道盆の料理を、試してみてはいかが。(新垣梨沙)

からし菜入りかまぼこ

からし菜入りかまぼこ

【材料1本分】
・からし菜…2/3束
・魚のすり身…(正味)300グラム
・水溶きかたくり粉…適量

【作り方】
(1)からし菜は葉の部分だけをつんでフードプロセッサーにかけ、さらしの布巾に包んで絞り、青汁を作る。
(2)すり鉢に魚のすり身を入れてよくすり、(1)の青汁を少しずつ加えて調整する(必要に応じて水、みりん、卵白、水溶きかたくり粉を加える)
(3)(2)のすり身を巻きすで巻くか、かまぼこ形に形づくる。蒸気の上がった蒸し器に入れて15~20分ぐらい蒸す。
(4)(3)が冷えたら1センチの厚さに切って盛り付ける。

ミヌダル(黒肉(クルジシ))

 ミヌダル

ミヌダル(黒肉(クルジシ))

【材料(10枚分】
・豚ロース…(8ミリ~1センチ)10枚
・黒ごま…100グラム
・砂糖…大さじ3
・しょうゆ…大さじ4
・みりん…大さじ1

【作り方】
(1)黒ごまは香ばしく炒って乾いたすり鉢に入れ、油が出るまでよくすりつぶす(またはフードプロセッサーにかける)。
(2)(1)に砂糖、しょうゆ、みりんを加えてさらに混ぜ合わせ、ごまだれを作っておく。
(3)豚ロースは5~8ミリの厚さに切り、(2)のごまだれの中に2時間ほど漬け込んでおく。
(4)蒸気の上がった蒸し器に、使い捨ての紙を敷き、(3)の黒い肉を重ねないように並べて、中火で15~20分くらい蒸す。
(5)(4)の表面が乾いたら食べやすい大きさに切って供する。