高江の森 けなげな愛 固有種・ケブカコフキコガネ


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ケブカコフキコガネを優しく手にのせ、ふわふわとした胸毛に触ってみる参加者ら

 2年間幼虫として地中で過ごし、クリスマス前後の夜に合わせて地上に姿を現して運命の相手を探すというロマンチックな昆虫がいる。東村高江区一帯に多く生息する奄美諸島・沖縄諸島固有種の「ケブカコフキコガネ」だ。成虫としてケブカコフキコガネが一斉に地上に出現するのは2年に一度。今年はその当たり年となったことから23日夜、チョウ類研究者の宮城秋乃さん引率の下、同地で観察会が開かれ、県内外在住の12人が参加した。

リュウキュウチクの枝にしがみつき、雌のフェロモンを感知しようと大きな触角を広げるケブカコフキコガネの雄=23日夜、東村高江

 ケブカコフキコガネは沖縄島各地に分布するが、高江と国頭村安波一帯の個体数は群を抜く。16日には米軍北部訓練場の「H地区」周辺でも雄の個体が確認されたばかりだ。

 この日の天候は快晴。満天の星空の下、参加者らは懐中電灯を片手に深い茂みへと歩を進める。事前に設置しておいたライトトラップには、大きな触角を広げ、雌のフェロモンを必死で探す雄の個体12匹が確認できた。角度を変えれば、名前の由来となっている立派な胸毛が目に入る。参加者らは優しく手に取りじっくりと観察すると「見れば見るほどかわいい」と顔をほころばせた。

 一方で、高江の自然を見守り続けてきた宮城さんは、こう漏らす。「ヘリパッド工事により地表が砂利やコンクリートで覆われたら出てこれなくなるし、地中に潜れなければ鳥などの捕食者に見つかってしまう」

 宮城さんの言葉に大きくうなずく沼田祐子さん(53)=さいたま市=は「2年もの間、土の中でこの時を待ち、一度交接すれば命果てるけなげな生き様に心を打たれた。どうか、ヘリパッド工事という人災による動植物へのいじめだけはやめて欲しい」と訴えた。(当銘千絵)

英文へ→Admirable love among indigenous beetles in the Takae Forest