琉球人墓 復元・保存へ 北京側承認、保全会に伝達


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「琉球処分」前後に中国へ亡命し、琉球救国を訴えた琉球人が眠る埋葬地=2015年12月15日、中国・北京市通州区張家湾鎮立禅庵村

 1879年の「琉球処分」(琉球併合)前後に琉球王国の救国を訴えて中国に亡命、北京で客死した琉球人らが眠る埋葬地が、発掘調査がなされないまま開発の危機に直面している問題で、開発を手掛ける民間の財団や北京市長は3日までに、埋葬地を復元・保存する方針を決めた。中国側で財団や北京市長に復元・保存を働き掛けてきた徐勇北京大学教授が同日、沖縄側の北京琉球人墓復元・保全会(又吉盛清会長)に伝えた。

 又吉会長によると、琉球人埋葬地の開発を担う民間の財団は、琉球人の墓を復元し、保存しても構わないという意向を示しており、北京市長もそれを承認することを決めたという。

 ただ、復元・保存の在り方を巡っては、記念碑を建てるのか、記念館を造るのかなど具体的方策は未定。このため、北京側と県側との間で、今後、復元・保存の在り方について検討が必要となる。北京側の関係団体・機関に復元・保存を働き掛け、沖縄側からの要請の窓口となってきた徐教授は、県からの要請書が必要との認識を示しているという。

 琉球人埋葬地を巡っては、北京琉球人墓復元・保全会が昨年4月、県に対し、中国当局に墓の保全を働き掛けるよう要請した。これを受け、県も保全に向けて動き、昨年5月13日付で北京市長宛てに適切な保護措置を依頼する文書を提出していた。

 埋葬地のある果樹園一帯は、首都機能の一部移転や大型テーマパークの建設計画がある。これを深刻視した県内の研究者らは昨年5月、北京琉球人墓墓参団(団長=国場栄正元王氏門中会会長)を結成し、埋葬地を墓参、管理者や地主と面談して墓碑の建立や管理が可能かどうか打診した。また、北京の歴史研究者らにも、琉球人墓の調査・復元・保存への協力を要請し、前向きな返答を得ていた。(新垣毅)
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<用語>北京の琉球人埋葬地
 中国の北京市通州区張家湾で数カ所確認されている琉球人が埋葬された場所。そこには、琉球からの進貢使、官生のほか「琉球処分」(琉球併合)に対して琉球の救国を訴えた陳情使ら14人ほどが葬られている。久米村出身の士族で親上雲(ぺーちん)の位を持つ王大業の墓碑も建っていた。墓碑は現在、通州区の博物館に保管されている。

英文へ→Beijing approves the restoration and preservation of Ryukyuan graves